記憶性の高いストーリーコンテンツである映画・ドラマの正しい語学応用法。人間の大脳の能力を十二分に引き出すボキャビル法を考える。
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前項「加速学習法で中国語楽習」で加速学習法というメソッド、というか、一つの学習理論体系を紹介しましたが、語学学習者にとっての記憶術という観点で考える場合、その核となるものが「ストーリーによるイメージ化」です。

本項ではこのストーリーの効用について、語学の鍵となる語彙学習・ボキャビルという角度から検証してみたいと思います。

忘却

語学が挫折を招きやすい理由の一つに「忘却」が挙げられます。特に語彙学習に顕著に見られるのですが、とにかく忘却の速度は半端ではありません。単語帳を作成して単語100個記憶しても、一ヶ月後に残っているものは一割に満たないのですから。

このため、語彙学習では何度も記憶を繰り返します。数日後、一週間後、二週間後、そして一ヵ月後......、というように、繰り返し覚えることで長期記憶化を図るのです。

このように繰り返していけば記憶定着度は上昇します。ただ、このような無機的な反復は非常に退屈なもので、それが挫折を生む大きな理由の一つになっています。

そもそも、人の大脳はこのような無機的な記憶には向いていません。意味のない語彙を羅列しても、記憶に残らないのです。このような記憶はコンピューターが得意とするところで、人はひっくり返ってもその足元にも及ばないものです。

単語帳の正しい使い方

一方で人の脳は意味のある語彙の羅列、中でもストーリー性のあるものに対しては相対的に高い記憶性を持っています。印象に残る映画のセリフは数十年を経過しても頭に思い浮かべることができるのはそのためです。

この能力を語彙学習に応用すればよいのです。簡単なことではありませんか。

いわゆる単語学習帳のような単語をカテゴリ別や頻出度順に並べたものを除いて、一般の市販テキストのテキスト文もストーリー性を帯びていますが、多くの学習者は別途単語帳を作ったり、テキスト文の後ろにリストアップされている新出単語リストで単語を覚えようとします。本当にもったいないことをしているものです。

テキストで出てきた単語はテキスト文の中で覚えればよいのです。いちいち手間をかけて単語帳を作る必要などありません。単語帳は、例えば通訳者が短期間で専門用語を頭に叩き込むときに使うようなもので、初中級レベルの学習者がボキャビルに使う方法ではないのです。

印象

問題は、ストーリーがあれば何でもよいのか、という点にあります。一言ストーリーと言っても、印象に残るものもあれば残らないものもあります。面白い映画、感動的な映画は記憶に残りやすいのもこれに同じです。

そして、残念なことに、一般的に語学テキストのストーリー性は、お世辞にも優れたものとは言えません。これは使用できる語彙や文法項目に制限があり、また特に初中級レベルでは、一般的に現実に即した内容、早い話ごく平凡な日常の一場面をテキスト化するので、映画の中で描かれるような、印象の残りやすい非日常的なシーンは、なかなかテキスト化しにくいのです。

もちろん日常の風景であっても、単語帳のような語彙の羅列よりもはるかに高い記憶効果を望むことができるのは間違いありませんが、大脳の能力を十分引き出すことはできない訳で、非常に惜しいところでもあります。

映画で学ぶ中国語

ならばいっそのこと映画やドラマのセリフをテキストにしてしまおう、と映画やドラマの台本をテキスト化した学習書も市販されています。

そのほとんどは英語学習テキストですが、近年中国映画を題材とした中国語テキストも出版されるようになってきています。数量的にはまだわずかですが、今後中国語市場が順調に拡大すれば、少しずつ増えてくるのではないのか、と考えています。

映画を利用した中国語学習については次のページでもまとめています。合わせてご参照ください。

映画で学ぶ中国語

スピードラーニング

映画やドラマを利用した学習法は、記憶性という点では優れていますが、そもそも語学向けに作られたものではないので、初級者にとって重要性が高い項目に欠けている一方で、重要性が低い項目が大量に含まれているなど、テキストとしては不完全であるケースが少なくありません。

語学として必要になる項目を網羅しつつも、映画ドラマのストーリー性を最大限に追求している語学プログラムも存在していますが、今のところ市場規模が大きい英語に限られており、中国語のような第二外国語市場ではその影を見ることができません。

それに近いものとして敢えて名前を挙げるのなら、先に紹介した『スピードラーニング中国語』 ぐらいなものです。

映像コンテンツの功罪

スピードラーニングは音声のみですが、これに関連して映像コンテンツの功罪について簡単にまとめておきます。

一般に映像がある方が記憶には残りやすいです。前項の繰り返しになりますが、人間の記憶保持力は、聴覚によるものは30%、視覚(画像)によるものは40%と、視覚イメージによる物の方が記憶性が高いばかりではなく、音と映像がセットになることによる相乗効果が期待できるためです。

ただし、初級レベルではリスニング力が大きく欠けるため、映像コンテンツを使用すると、視覚に過度に依存する傾向が強くなり、リスニング学習効果が大幅に低減する可能性が高くなります。

このため、初級レベルでは敢えて映像コンテンツは控えめにして、できる限り耳で勝負する環境を構築する方が、学習効果はより高くなるでしょう。

リスニング力が完成してくる中級中期以降では視覚依存性が低くなるので、この心配は要りません。逆に映像コンテンツを取り込んで記憶性を追及した方が、学習効果は高くなるものと思われます。

また、このレベルでは、基本項目について既に学習を修了しているので、映画やドラマを直接テキストとしても問題はありません。映画やドラマでは日常的に使われるスラングのような活きた表現が豊富なので、これに接することでより自然な中国語を身につけることができます。このレベルに達したら映画・ドラマ鑑賞がそのまま中国語のお勉強になってしまうのです。

一日も早くこのレベルに到達して、リモコンを片手に中国語楽習しましょう。

Time:
  • 2008年9月22日
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