【分析レポート】CANON wordtank V903

特徴(メーカーより)

※参照:キヤノン・ホームページ

収録辞書コンテンツ

中国語の大辞典や中中辞典、業界初の上海語・広東語・台湾語の地方言語会話集など、中国語コンテンツは業界最多の15種類。一般語彙のみならず、百科項目、政経時事、科学技術用語、方言、俗語、成語、古語など、豊富な語彙と的確な解釈を検索することが可能。「中国語のEメール表現」や「日中英・電子技術用語対訳集」のような実用系コンテンツも収録。中国語コンテンツの他にジーニアス英和大辞典、スーパー大辞林のような英語や国語の大辞典を始め、10種類の英語コンテンツ、4種類の国語コンテンツを搭載し、計29種類の豊富なコンテンツを収録。

※コンテンツ一覧は中国語電子辞書比較表 (2008)を、前モデルとの差分についてはキヤノン ワードタンク 歴代中国語モデルまとめを参照のこと。

充実した音声学習機能

音声学習モードは業界最多。中国語9種類、英語4種類のコンテンツにおいて、ネイティブスピーカーによる発音を収録。中国語では14万語のネイティブ発音(中日大辞典)を始め、中日辞典の約7万2000語など業界最多のネイティブ発音数を搭載。また、本体に内蔵されたマイクで自分の発音をMP3方式で録音できるボイスレコーディング機能と、録音した自分の発音とネイティブスピーカーの発音と聞き比べる発音比較機能も搭載。

この他、ディクテーション学習機能、リピーティングやシャドーイングに利用できるオーディオブック機能も搭載。MP3プレーヤーの機能も搭載されているので、市販のMP3コンテンツも再生可能。再生速度は3段階で調節可。

手書き検索をはじめ、直感的な操作が可能な全面タッチパネル

4.9型の大画面液晶の全面にタッチパネルを採用、手書き検索も可能。また、辞書アイコンをタッチするだけで辞書の引き比べをすることができる「辞書リンク」機能など、直感的に操作が可能。

バックライトとUSB機能

LED方式のバックライトを搭載し、暗い場所や画面が見づらい場合でも問題なし。パソコンとのUSB接続により、パソコン上の中国語、英語、日本語のテキストデータを選択しショートカットキーを押すだけで、電子辞書の画面で検索結果を表示できる「USB辞書」機能も実装。

豊富な収録辞書を使いこなすための多様な検索機能

北京語・上海語・広東語・台湾語を同時検索し、発音や各地の言語の表現の違いなどを確認する「中国語地方言語リンク」(※業界初)、独自開発の概念エンジンで、現代中国語を品詞別分類し、意味や習慣などを織り込んだ言葉のつながりから、正確な用語がわからなくても、関連する事柄や類語を利用して対象となる用語を検索する「中国語概念リンク」(※業界初)、中日大辞典と中日辞典の収録語句をことわざ・成句・慣用句・しゃれ言葉・尊敬語・俗語など14項目で分類し、用語集として閲覧する「中国語活用索引」機能を搭載。

この他、作文に役立つ中国語と英語の例文検索や、複数の辞書を一度に検索できる複数辞書検索、複雑な漢字でも一部分の読み方から調べることができる部品読み検索など、様々な検索機能を搭載。

拡張カードでコンテンツ追加

中国語以外の第二外国語もオプションで追加可能。また、履歴や単語帳、メモ、ブックマーク、環境設定をSDメモリーカードに保存できるバックアップ機能も搭載。

解説(By 管理人)

当サイト推奨の電子辞書「CANON wordtankシリーズ」の最新バージョンがリリースされた。

先代の90シリーズは音声機能が充実した中国語学習者向け「V90」と、中国語コンテンツが充実した研究者向けの「G90」に分かれていたが、最新のV903では一本に統合され、名実共に最強の中国語電子辞書と成った。

ここに注目!①……「便利!手書き入力機能」

もはや中国語電子辞書を名乗るのなら欠かすことができない機能となった手書き入力機能。中国語は同音の漢字が多く、発音(ピンイン、要はアルファベット順)から当該文字を探すのは手間がかかる。また漢字を見てもピンインが出てこない初級者の場合さらに厄介で、部首、画数から単語を引くことになるのですが、これがかなり面倒な作業となる。

それが手書き検索だと一発。従来の辞書では逆立ちしてもできな芸当である。特に入門・初級者にとっては福音と言って良いだろう。

ここに注目!②……「音声確認」

発音が重要な入門・初級者にとっては不可欠の機能。しかも、ジャンプすることなくすぐ発音を確認することができる。

ここに注目!③……「発音学習機能」

本体内蔵マイクで自分の発音をMP3方式で録音できる。そして驚くべきは録音した自分の発音と辞書収録のネイティブスピーカー発音と聞き比べる発音比較機能を実装しているところ。中国語における発音の重要性を考えると、この機能は素晴らしいの一言に尽きる。

ここに注目!④……「リスニング学習機能」

初級レベルの学習で大きな効果を発揮するディクテーション学習機能が付いている。さらに、収録会話集のテキストを日本語訳と中国語でまるごと聞き流したり、中国語だけの発音を聞いたり、ランダムに発音させたり、指定区間だけを繰り返し聞いたりすることができるオーディオブック機能なるものも搭載されている。

要は収録会話集のリピーティングやシャドーイングができるわけだ。これもオドロキである。ここからも単なる辞書の域を超えようとしている姿が垣間見られる。

ここに注目!⑤……「MP3プレーヤー機能」

市販のMP3コンテンツが再生できます。それだけなら何でもないのだが、再生速度が3段階で調節可能であるところに注目。まさに学習のためのMP3機であろう。

ここに注目!⑥……「圧倒的なメイン中国語辞書コンテンツ」

日本最大の中日辞典『中日大辞典』を収録しています。この辞書を収録しているのはキヤノンとカシオの二社のみ。加えてキヤノンは『現代漢語詞典』まで収録している。この辞書は、知る人ぞ知る、中国で最も広く普及している中国の国語辞書である。

日本の電子辞書で『現代漢語詞典』を収録しているのはワードタンクのみである。中級レベル以降における中中辞書の重要性を考えると、この辞書の存在はあまりにも大きい。

ここに注目!⑦……「英⇔中辞書まで!」

『オックスフォード英中/中英辞典』も収録されています。英語使いや英語習得も視野に入れている中国語学習者には有用なコンテンツである。

ここに注目!⑧……「上海語・台湾語・広東語コンテンツ収録」

ついに方言にまで手を伸ばし始めた。当地で想像以上の効果を発揮する方言。ビジネスマンならかじっておいて損はしない。

ここに注目!⑨……「新概念の検索機能実装」

単なる複数辞書同時検索を超えた、新しい概念の検索機能が実装されている。方言間の差異を比べることができる「中国語地方言語リンク」、言葉を有機的に関連付けて、関連項目や類語から対象となる言葉を捜してくれる「中国語概念リンク」、メインの中国語辞書コンテンツの収録語句を項目分類して用語集としてしまった「中国語活用索引」、前二者は業界初お目見えの機能。キヤノンの中国語電子辞書にかける意気込みが伝わってきます。

ここに注目!⑩……「単語帳機能」

引いた単語を単語帳に登録することができます。メモリーカードへバックアップも可能。

ここに注目!⑪……「パソコンとの融合」

USB接続でパソコンのテキストを選択、検索することができる。インターネットで中国のサイトを閲覧するのにも使えてしまうわけだ。

ここが不満!……「G903はないのか……」

「90」シリーズは音声・発音学習機能付きで初級者向けの「V90」と、音声と学習機能を削る換わりに日本最大の中国語辞書である『中日大辞典』を収録したモデル「G90」に分かれていたのだが、903はVシリーズに統合してしまったようだ。

不満という訳ではないのだが、上級者やいわゆるプロな人は学習機能や音声機能は必要ないので、学習機能を省いてその分価格が安くしてもらえれば万々歳なのだが……

……でも、一つにまとめてしまった方が大量生産できるのでコスト下げやすいのかもしれない。

総括

「80」→「90」と来て「903」だったので、「90」をベースにした改良版かな、と考えていたのだが、そこはどっこい……すごいことになっているではではないか。

まずは前作の、くだらないながら致命的な欠点であった液晶画面が暗いという問題。V903ではついにwバックライトがついた。ぶっちゃけこれだけでも買いかもしれない。

メインの辞書は更新されていないが、今回コンテンツ的に注目なのが方言系の追加です。検索で北京語・上海語・広東語・台湾語を比較できるところはすごいの一言。一般の学習者にとってはあまり関係のない機能かもしれませんが、プロにとってはうれしい機能です。そして新たに「中国語概念リンク」なる機能も追加されています。処理技術もかなり進歩したようだ。

この他に目立って強化されているのがリスニング系の学習機能。ディクテーションは言うまでもなく、リピーティングやシャドーイングに使える機能も追加されている。MP3プレーヤーの機能もあり、市販のMP3コンテンツが再生できるのだが、再生速度が3段階で調節可能できるところはすばらしい。単なる電子辞書の域を超え、総合中国語学習マシンへ脱皮を図ろうとしている姿が垣間見られる。未来の電子辞書の雛形を見る思いだ。

そして個人的に非常に注目しているのがUSB接続機能。ますます普遍化しているパソコン・インターネットと電子辞書を繋ごうとする試みである。パソコンのテキストを選択して、それをワンクリックで電子辞書上で検索することができます。

要は、電子辞書がパソコンの領域に足を踏み込み始めているのだ。これまでパソコン上は辞書ソフトの独壇場だった。それがV903の登場によって、ついに直接的な競合関係が芽生えたのだ。

現状ではただ単にパソコン上のテキストを電子辞書で検索できるだけだが、今後より一層パソコンの領域に踏み込んでくるのではないだろうか。パソコンの辞書ソフトはコンテンツ数的に電子辞書に比べ大きく劣っているので大きな脅威になるであろう。今後の展開に注目である。

最後に簡単にまとめる。なんかベタ褒めになってしまったが、それだけブッちぎりなのである。これから中国語を学ぶ人、入門初級レベルにある人には、絶対に買いであると断言できる。学習機能が強化されているので、将来のテキスト代も軽減できるであろう。

中級以降の学習者にとっても、中中辞書が収録されているのはキヤノンのみであるから電子辞書を購入するならやっぱりV903で決まりか。う~ん。競合よ何をしている……

ライバル他社の中国語電子辞書と比較したレポートも公開している。合わせて参照のこと。

【比較検証レポート】最強の中国語電子辞書はどれだ...... ワードタンクV903 vs エクスワード vs パピルスPW-LT220

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WordtankV903について

中国語暦3年未満、いままで電子辞書はあえて買わず、納得いくもの(英語学習時に英英の辞書・文法書を使うことがとても大事だとわかっていたので、中中・英英・英中・中英が搭載されたもの)が出るのを待っていました。金3万円也を出してWordtankV903+2GのSDカード+充電式電池。買って10日あまり、いつも持ち歩いて飽きが来そうにありません。MDカードに王菲、孫燕姿、中国語教材を入れてご満悦といったところ。通勤電車でもまるでゲームをしているような状態です。ひとつ意味を調べるために入力したら、中→英→日→派生→中→日→英といった具合に一時間があっという間に終わってしまいます。出張にも必携アイテムとなりそうです。事務所ではPCにつないで重宝しています。大辞林みたいな中中・英英がついて、簡易のワープロ機能がつけば最高なのですが…