【分析レポート】スピードラーニング中国語

教材の特長

※参照:スピードラーニング公式サイト

  • 特長1:聞き流すだけだから、ライフスタイルに合わせて誰でもすぐに始められる
  • 特長2:中国語の後に日本語を収録 だから、辞書なしで中国語が聞き流せる
  • 特長3:中国語→日本語の順で聞くうちに、中国語を中国語で理解する回路ができる
  • 特長4:BGMのクラシック音楽でリラックスして聞き流せる
  • 特長5:リスニング力の上達がはっきりと実感できる中国語のみを収録した「中国語CD」付き
  • 特長6:発音のきれいなナレーターを起用し、中国語の標準語「普通話」の会話を収録
  • 特長7:中国語を先にキャッチするための「ポン→中国語→日本語」
  • 特長8:中国に行ったときに役立つ話題と、すぐに使える実用的な表現が満載!

予備知識

いわゆる「聞き流し」系の教材である。スピードラーニングは数ある語学教材の中でも長い歴史を持つ、「聞き流し」系の代表的な存在である。英語から始まり、現在は中国語の他にも、韓国語・フランス語版が存在する。

この教材の評価を行う前に、なぜ聞き流すだけで身につくのか、という点について簡単に解説したい。

学校の英語教育は文法と読解に偏重するため、リスニングとスピーキングはほとんど伸びない。一方、語学において会話は非常に「目立つ」存在であり、日本では一般的に会話力を以って語学力を評価する傾向が強い。「日本人は英語が苦手」とよく言われるが、ここでいう「英語」とは「英会話」を指していることが多いのだ。

つまり、日本人は英語力がない訳ではなく、単に文法に偏っているだけなので、リスニングを徹底して行うだけでも、会話力を伸ばすことができるのだ。ちなみにリスニングを行うだけで会話力を伸ばすことができるのは、リスニングとスピーキングに強い相関関係が存在するためである。

このように、「聞き流し」系の教材は学校教育の偏重を利用したものであるため、学校でしっかり英語を勉強していた人ほどその効果は高くなる。これが「聞き流し」系メソッドのカラクリである。

以上の点を踏まえた上で、中国語版について評価したいと思う。

分析

まず、公式サイトに掲載されているアピールポイントについて分析してみたい。なぜ聞き流しで中国語が身につくのか、というこの教材への根本的な問いに対して、公式サイトでは次のように説明されている。

簡単にまとめれば、以下のようになる。

  1. 幼児が母語を習得するプロセスを踏襲
  2. 最初に中国語のリズムに慣れ、「中国語特有の音」を聞き取れるようになることが大切
  3. 聞き流しは声調をマスターするのに最適である

まず第一に、幼児が聞くだけで言葉を覚えていくのは、幼児の脳にはそのような機能があるからで、それを成人がそれを真似ても幼児と同じ効果を期待することはできない。ある程度の会話力を身につけることはできるだろうが、成人の長所である理解力を利用した方が習得は早くなる。幼児の母語習得プロセスを例に引くのはリスニングや会話を中心とするメソッドや教材に共通する特徴だが、これはあくまでセールストークであると肝に銘じておこう。

また、「中国語特有の音」を聞き取れるようになることが大切なのはその通りだが、「声調」をマスターするのに聞き流しが最適であるというのも語弊がある。たくさん聞くことが「声調」を身に付けるのにプラスに働くのは確かだが、声調がどのようなものなのか、理論的に理解して、曲がりなりにも発音できるようにしておく方が良い。多聴はそれと平行して行うべきことだ。

次に、冒頭で引用した「8つの特長」について見ていこう。

  • 特長1:聞き流すだけだから、ライフスタイルに合わせて誰でもすぐに始められる
  • 特長2:中国語の後に日本語を収録 だから、辞書なしで中国語が聞き流せる

これはその通りである。聞き流し系メソッドの強みは、まさにこの柔軟性と簡便性にあるのだ。机に向かう必要がないので、学習を始める敷居が非常に低い。ソファーやベッドの上でもできるし、家事や通勤時間のような、利便性の低い時間を有効活用することもできる。学習ストレスが非常に低いのだ。

テキストも存在するが、あくまでテキスト無しで学習を進めることができるようになっている。辞書を引く必要がないというのも良い。辞書を引く作業は思いの外時間を取られるもので、ストレスの原因となるのだ。

  • 特長3:中国語→日本語の順で聞くうちに、中国語を中国語で理解する回路ができる
  • 特長5:リスニング力の上達がはっきりと実感できる中国語のみを収録した「中国語CD」付き
  • 特長7:中国語を先にキャッチするための「ポン→中国語→日本語」

いわゆる中国語脳の育成には中国語だけで多聴多読を行う必要がある。これは主に中級以降で行うものだが、内容がアタマに入っていれば、初級の段階でも中国語だけで内容を聴き取ることができる。これは中国語脳の早期育成に役立つだろう。

  • 特長4:BGMのクラシック音楽でリラックスして聞き流せる
  • 特長6:発音のきれいなナレーターを起用し、中国語の標準語「普通話」の会話を収録

クラシック音楽を背景音にするメソッドは語学教材でよく採用されているもので、まず間違いなく一定の効果はあるだろう。ただし、この手法はこの教材に限ったものではないので、ここであえて特筆すべきものでもない。発音のきれいな云々に至っては当たり前の話だろう。

  • 特長8:中国に行ったときに役立つ話題と、すぐに使える実用的な表現が満載!

コンテンツは制作担当者が実際に体験した出来事をもとに制作されているそうで、臨場感を追求している。文法にこだわったメソッドではないので、文法に沿ってテキストを構成する必要がないのだ。学習コンテンツ作成側の視点から言えば、文法の縛りがないというのは非常に大きい。その分面白さを追求できるのだ。

この他、月2回の中国人とのフリートークやアドバイザーのサポートシステムなども提供される。

評価

この教材を評価する上で最も重要な点は、スピードラーニングはあくまで会話能力の早期習得を追求するものであるというところだ。予備知識の中でも述べたように、リスニングとスピーキングに強い相関関係が存在する。会話能力を早期に習得したいのならば、このメソッドは確かに有効であろう。

ただし、これも予備知識の中で述べたことだが、聞き流し系メソッドの効果は既存の外国語力の影響が大きいので、ゼロから中国語を始める人にはあまりおすすめできない。もちろん、ある程度の会話さえできれば良いということならば、スピードラーニングは一押しの教材だ。

また、中国語を学習しているが、なかなか身に付かない人、或いは挫折を繰り返している人にもおすすめだ。学習しているがなかなか身に付かない、という人は、文法力などはそこそこ持っているケースが多い。このような人は、リスニングを徹底して行うことで、爆発的に伸びることがあるのだ。

挫折を繰り返している人は、時間的な制約があったり、根気がないというケースが多いが、聞き流し系メソッドは時間的な柔軟性が高く、また学習ストレスが低いので、このようなタイプの学習者にとって実践しやすいメソッドである。これでダメなら中国語を諦める、というつもりで試してみれば良いだろう。

会話だけではなく、総合的な中国語能力を高めたい、という場合でも、初級後期からのリスニング教材として利用できる。中国語脳の早期育成に寄与してくれるだろう。

体験談

体験談1

スピードラーニング中国語の感想です。

一定レベルまでフレーズで覚えるには最適かもしれません。ヒヤリングの力を増強するには有益です。さらに進化するには、日本語のないバージョンに進むのが必要かと思います。

ただし、本当の初心者がこれを聞くだけで学習というプロセスにはいれるかというと疑問。少なくとも中国語検定でいうと4級~3級くらいはないと逆効果かと思います。このへんが、英語版との違いだと思います。

コメント(小平)

ご感想ありがとうございました。

おっしゃるとおりスピードラーニング中国語は入門レベルを終了した人向けですね。中国語検定4級~3級レベルにある人向けに最適化されていると私も思います。

体験談2

スピードラーニング中国語版体験者です。2003年に、仕事で中国出張が多くなり、全く中国語ができないレベルで、スピードラーニングを申込み、全巻聴きました。 フレーズとして頭に入るので、短い会話は自然にできるようになりました。現地の人にも、日本人にしては自然な中国語だと言われました。

2006年からは出張回数が減り、日本の中国語学校で勉強していますが、4年間で中検3級を2回受験し、2回とも合格、どちらもリスニングの方が高得点で、2回目はリスニングで満点を取りました。

文法をしっかり身につけ、語彙を増やすためには、やはり読み書きの学習は欠かせず、自分ではその点が弱点と感じますが、学校で一緒に勉強している同学たちは、文法や表現の細部にこだわるものの、会話には及び腰で、“話すための語学”になっていないと感じます。

会話形式で進むスピードラーニングは、会話で使う単語のニュアンスも自然と理解できるので、話すことをめざす人には有効な教材だと思います。

コメント(小平)

ご感想ありがとうございました。

やはりスピードラーニングの本質は会話力の向上にあります。中国語の基礎はあっても会話に自信がないという人におすすめです。

体験談募集

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