“一保一控”“又好又快”~政治言語の妙

“一保一控”という表現をご存知ですか。最近ニュースなどでよく耳にする表現ですが、“保增长通胀”と言う場合もあります。

後者は一目瞭然ですね。文字通り「経済成長を保持し、インフレをコントロールする」の意で、最近の経済政策のことを言っています。

政治的な話になりますが、政治用語というのは非常に微妙なもので、“保增长,控通胀”と“控通胀,保增长”では意味が微妙に変わってきます。

“保增长,控通胀”では経済成長を保持することにより重点があり、“控通胀,保增长”ではインフレのコントロールに重点が置かれた表現となります。はじめにくる方が重要なんです。

最近はインフレが落ち着きを見せ始める一方で、世界経済萎縮の影響を受けて倒産が増大するなど、経済成長にかげりが見え始めているので、成長保持に軸足を移してきています。

インフレは庶民の家計を直撃するので必死に抑えていますが、不況になって失業者が増大することも同じく庶民の家計の脅威となるので、政府は必死ですよ。

“又好又快”

去年の秋ぐらいは“又好又快”という言葉が使われていましたね。“好”は経済成長の質のこと、“快”は速度のことで、経済成長の速度より質を重視する、という意味が込められています。仮にこれが“又快又好”だったとしたら、速度優先となる訳です。

質優先か速度優先か、というものも一つの政治路線闘争ですから、そこで最終的に決定された言葉には非常に大きな重みがあります。“又…又…”の構文だから同列だ、なんていう文法的な解釈では読めない意味が込められているのです。

「霞ヶ関埋蔵金」

政治家が言葉使いに長けているのは別に中国に限った話ではありませんね。例えば日本の「霞ヶ関埋蔵金」。埋蔵金なんていうあまりに刺激的な表現のため、一気に国民に認知されることになりましたが、この言葉の生みの親はご存知の如く政治家です。しかも、会計の中にストックがあるという指摘に反論して「埋蔵金伝説みたいなことを言うな」と言ってしまったがために、逆に注目を集めてしまいました。その存在を広めるつもりではなく、否定しようとして墓穴を掘ってしまったのだからご本人はさぞかし悔やんだことでしょう。

「言葉の魔術師」という表現がありますが、言葉には多様な意味を込めることができます。使った本人の意図から外れて勝手に拡大解釈されたりすることもあり、時に予期しなかった結果を生むこともあるので、言葉を使う者としてはやはり注意したいものです。

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