インプット学習とアウトプット学習

外国語学習・教育方法論においては、多種多様な学習方法についてさまざまな分類や線引きが行われるが、中でもメジャーな分類方法が「インプット」と「アウトプット」である。AV機器を扱い慣れている人はピンとくるかもしれない。インプットは"input"、アウトプットは"output"、それぞれ「入力」と「出力」を意味する言葉だ。

語学においては、インプットは受動型であるリスニングとリーディングを、アウトプットは能動型であるスピーキングやライティングを指す。外国語を学ぶ以上、この4分野はいずれも欠かせないものだが、学習を進めるに当たって、この4つを均等に、平行して行うことはなく、時期・レベルに応じていずれかに傾注したり、特定の項目を外したりするものだ。

また、独学の場合は学習者個人の嗜好に応じて取捨選択されるもので、リスニングやスピーキング一辺倒だったり、ライティングはまったく行わない、というケースもあるようだ。特に中国語の場合はその特質上リーディングが容易なので、リーディングが軽視される傾向も強い。

先にも述べたように、理論は理論として、 個人レベルにおいては相性というものがあるので、実際に中国語力が伸びるのならばそれでも良いのだが、学習効果の最大化を目指す場合は、それぞれの項目において、どのタイミングで、どれほどの時間をその学習に当てるのか、という点が重要になる。

その具体的な配分方法についてはまた項を改めて紹介するが、ここではそれに先立って、インプット学習とアウトプット学習の特徴・相互関係・学習効果及びその意義について簡単にまとめてみたいと思う。

手軽なインプット学習と高効果なアウトプット学習

単に学習効果で比較するのならば、アウトプット学習の方がインプット学習よりおしなべて高い。アウトプットは自分の頭で考えて発信する分、記憶の定着度はインプットより高くなる。ではアウトプット学習中心で学習を進めれば良いのではないのか、という話になるのだが、事はそれほど単純ではない。

インプット学習は主にリスニングやリーディングを指す。学習法という観点から見た場合、その最大の利点は「手軽さ」にある。リスニングは音源さえあれば、リーディングは本一冊あれば、意味がわかるわからないはともかくとして、一人でいつでもどこでも行うことができる。多聴多読であれば辞書や参考書は必要ない。教材さえあれば良いのだ。リスニングは学習者のレベルが低くて聴解できなくとも無駄にはならない。聴解できなくても聞き続けることで、中国語の音に慣れることができるからだ。

アウトプット学習は主にスピーキングやライティングを指す。「手軽さ」という点では、インプット学習には遠く及ばない。インプットのように手軽に行う方法もあるにはあるが、制約も多い。また、アウトプット学習を手軽に行うためには、その大前提としてある程度の中国語力を備えている必要がある。中国語レベルが低い段階でアウトプットを行うと、その都度辞書や参考書を参照しなければならず、効率が極めて悪くなる。

教室などで講師について学習したり、テキストに沿って学習を進める場合は問題ないのだが、自由度はどうしても小さくなる。講師やテキストが敷いたレールを外れることができないからだ。

それぞれ補完的な存在価値を持つインプット学習とアウトプット学習

このため、独学で学習を進める場合は、インプットから入って、ある程度の中国語力をつけてからアウトプットに軸足を移すのが良い。自力でアウトプット学習を遂行することができるレベルになるまでは、素直にインプットを重ねる方が実行しやすく、楽なのだ。

どのタイミングで、どの項目から移行していくのか、それは学習者個々の状況にもよるので一概には言えない。標準的な事例については項を改めて紹介していきたいと思う。

個人や少人数でレクチャーを受けることができる恵まれた条件にある学習者の場合は、早い段階からアウトプット学習を取り込むことで、より高い学習効果を期待することができる。もっとも、これは教師によるところが大きいので、ここでは詳述しない。カリキュラムについて綿密に打ち合わせるのが良いだろう。

いずれにせよ、インプット学習とアウトプット学習は、対立する概念ではあるのだが、それぞれ補完的な関係を持つ。大切なのは、それぞれの学習方法の意義と目的を正しく理解し、その効果を最大限のものにすることであろう。

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