中国語のススメ

中国語のススメ

かつて、中国語はマイナーな言語だった。

大戦後東西異なる陣営に分かれた日本と中国大陸。日本においては中国の存在そのものがマイナーになった。大学の第二外国語はフランス語やドイツ語のようなヨーロッパ言語が主流で、中国語は単なる物好きの道楽であった。

変化が訪れたのは四十余年前、中国大陸を占拠した共産党政権との国交回復に遡る。その後中国の改革開放と経済成長によって日中間の経済活動が活発化、ビジネス中国語特需に沸いた中国語は一気に第二外国語筆頭の地位を占めるに至った。

経済成長の中で体制の矛盾に起因する社会の歪みが拡大し、「崩壊する」と言われながら爆走してきた中国。気づけばGDPで日本を追い抜き、アメリカの後ろ姿が見え隠れするところまできている。今やその経済は世界経済を左右する存在になったのだ。

21世紀初頭に流行った「21世紀は中国の世紀」という表現は、既に人口ボーナスのピークアウトまでカウントダウンを迎えていることを考えると誇張でしかないが、多極化を迎える中でその中の一極を中国が占めることは間違いない情勢にある。

中国経済がピークアウトしても、日本にとって中国がすぐ隣にある巨大市場という位置づけは変わらないだろう。中国語に「瘦死的骆驼比马大」(やせて死んだラクダでも馬より大きい)という言葉があるが、経済的価値について言えば、日本人にとって中国語が英語に次ぐ外国語であるという位置づけは、地理的要因から見て不変であろう。

学びやすい言語

中国語は難しいと(特に中国人から)よく言われるのだが、日本人にとっては英語より学びやすい言語である。もちろん英語は中高の学校教育の中で学んでいるので、それを計算に入れれば、英語をしっかりと学んできた人にとっては英語の方が簡単かもしれないが、ゼロから始めるなら中国語の方がラクであることは確かだ。

中国語の方が学びやすいのは、日本人が漢字に精通しているところにある。現在では字体こそ多少異なっているが、起源を辿ればいずれも同じ漢字だ。漢字を母語で使わない人にとって、漢字は中国語習得の最大の障害となるが、日本人はその母語の中で2136字(2010年以前は1945字)もの漢字を常用漢字として採用しているため、およそ正規の教育を受けた日本人ならば、漢字が中国語習得の障害になることはない。

ちなみに中国で常用字として指定されているのは2500字で、完全に重複する訳ではないが、この数字からも母語で漢字を使う日本人が如何に有利なのかわかるであろう。

また、近代以降においては日本から中国へ語彙が大量に輸出されているので、共通する語彙も多い。実用上必要になる文法も英語に比べ単純だ。

中国語習得の壁になり得るものとしたら発音だろうか。現代標準中国語(普通語)の発声構造は日本語のそれとまったく異なり、声調のような日本語にない概念も存在するので、これに躓く日本人も少なくない。特に発音は一番始めに学ぶものなので、これが難しいという印象を与える原因になっているのかもしれない。

逆に言えば、発音さえ乗り越えてしまえば、後は平地を行くがごとくなるものなのだ。

また、ビジネスのために習得するのならば、会話は外せないので発音は無視できないが、単なる趣味として、例えば中国語で中国の古典を楽しみたい、というような話なら、発音にこだわる必要はなくなる。老後の嗜みのような位置づけであれば、これほど学びやすい言語は他にないであろう。

中国語のススメ

ビジネススキルとして外国語を学ぶならば、やはり英語は外せない。その上で差別化を図りたいのなら......やはり中国語になるのではないだろうか。すぐ隣にある巨大市場で使われている言語なのだから。

英語はキライ、アルファベットは見たくない、でも外国語をやってみたいのならば......やはり中国語であろう。漢字で学べる言語なのだから。

人生半ばを過ぎて、経済的理由なしに外国語を考えるのなら......やはり中国語だ。日本人にとって最も親しみやすい言語なのだから。

中国はキライである。中国はやがて日本を侵略するであろう。日本を守らねばならない、とお考えならば......やはり中国語を学ばずにはおけない。敵に勝つには敵を知る必要があり、そのためには敵国言語能力が欠かせない。第二次世界大戦の轍を踏んではならないのだ。

地理的にも歴史的にも文化的にも中国は日本と最も密接な関係にあり、13億プラスα(αは神のみぞ知る数字)の人口と25倍の面積(砂地も多いが)を抱える国がすぐ隣にあるのだ。たまたまそこで使われている言語が中国語なのだ。

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2014-03-27 Last modified: 2014-03-27