※ダイジェスト
真実(世間)を欺く馬
3回に分けて中華ネット世界に出現した十大神獣を紹介してきましたが、この他にもいろいろな神獣……と言っていいのかどうかわかりませんが、同じく“谐音”(漢字の発音が同じ、もしくは近いこと)を利用した、新たな生物が続々と誕生しています。
※十大神獣については過去ログを参照:草泥馬/法克鱿/雅蠛蝶/菊花蚕/达菲鸡/潜烈蟹/吉跋猫/吟稻雁/尾申鲸/春鸽
今回紹介する“欺实马”もその一つ。由来はある交通事故。スピード違反のスポーツカーが通行人をはねた、という、ごく一般的な交通事故なのですが、現代中国社会が抱える問題の縮図として、マスコミに大きく取り上げられました。
ポイントは大きく分けて三点。まずはじめに、スポーツカーを運転していた加害者が、いわゆる金持ちのどら息子だったこと。社会主義とは名ばかりの貧富格差が大きな社会問題となっている中国ですが、最近特にクローズアップされているのが、甘やかされて育った金持ちの二代目。ちょうど経済的に成功した中国人の子供の世代が20代に突入してきており、彼らの羽振りの良さが視線を集めるようになっています。
そんな中で、どら息子が街中でカーレースを行い、速度オーバーで通行人をはねたばかりではなく、事故現場に駆けつけた友人たちと、笑いながらタバコを吸っていた姿が伝えられ、大衆の顰蹙を買った、という点がまず第一点。
次に、警察が、事故発生当時の車速を約70kmと発表したことが注目を集めました。被害者が跳ね飛ばされた距離から推測して、とても70kmではおさまらないと考えられたためです。
ここでポイントになるのが違反速度。中国の法律では、時速75km以下の場合、被害者の家族と示談をすることで、刑事責任が免除されます。示談ということは、要はカネ次第。子供がスポーツカーを乗り回すような家庭なら、その程度の金はなんとでもなるわけで、それが貧富格差に不満を持つ大衆の神経を逆撫でしました。
さらに、警察も槍玉に上がります。加害者側がカネで役人や警察関係者を丸め込んだのでは、との憶測が、当然のことのように広がったためです。腐敗が普遍化している中国では、悪徳商人と悪代官がつるんで庶民を食い物にする、という、日本で言うところの江戸時代を描いた時代劇のような図式が現在進行形の状態にあると、少なくとも一般庶民の間では広く認識されており、その図式がこの事件に当てはめられたのです。
事実、事件発生直後、事件に関する掲示板の書き込みが大量に削除されるなど、政府による情報統制も行われたようで、それがまた返ってネットユーザの強い反感を呼ぶことになります。そんな訳でネット世論は警察非難一色に。警察側はたまらず「公平に処理する」との声明を出し、鑑定の結果、事故発生当時の車速は84kmから101kmだったと発表されました。
事件の大体の成り行きはこんな感じです。この事件でポイントとなったのが70kmという車速ですが、中国では速度を表すkmについて、俗に“码”で表すため、この事件でも“70码”と発表されています。“欺实马(欺世马)”はこの“70码”の“谐音”です。“70码”を「真実(世間)を欺く馬」と読んだところに、人民の政府への不信を垣間見ることができます。
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