中国語の発音はそんなに難しいのか

一般的に中国語の発音は難しいとされる。その所以は、声調という日本語とは異なるトーンの変化という概念のためであろう。

声調とは

声調は文単位で変化するイントネーション(抑揚)とは別物で、単語ごとに決められた音の高低のパターンである。日本語のアクセントと異なるのは、日本語のアクセントが複数の音節の高低であるのに対し、中国語のトーンは単音節内で発生する。例えば、日本語の「橋」と「箸」は「は」と「し」の高低アクセントで判別するが、中国語の“妈”(母)と“马”(馬)は母音“a”のトーンの変化で判別する。“妈”は第一声と呼ばれる高く平たい音で、“马”は第三声と呼ばれる低めのところから一度沈んでまた上昇するという、日本人にとっては非常にわかりづらい音で発声される。

中国語ではこの声調を間違えると全く別の意味になる語彙が非常に多い。母音や子音は多少ブレてもまだ通じるが、声調を間違えると途端に通じなくなる。

自転車のようなもの

では発音はやはり難しいのか、と問われると、首を傾げざるを得ない。一度コツを掴んでしまえば実に簡単なものだからだ。

敢えて喩えるのなら自転車のようなものだろうか。まだ補助輪を外せない幼い子どもにとっては難しいものだが、一度コツを掴んでしまえば至極簡単なものだ。まぁ自分の発音学習の過程は必ずしも平坦なものではなかったので、偉そうなことは言えないのだが。

発音が難しいか否か、については、やはり方法論に依存するところが大きいと思われる。要は学び方次第なのだ。そういう意味では、わたしの発音学習の過程は反面教師的なものである。この方法論については項を改めてまとめてみたいと思う。

聞く発音に話す発音

コツを掴んでしまえば発音など簡単だ、と言ったが、それはあくまで話す発音に限られる。聴き取りについてはこの限りではない。

一般に発音といえば発声の方を指すのだが、聴き取りについても含めるのならば、必ずしも簡単だとは思わない。特に鼻音[n]と[ng]の聴き分けは難しい。試験などで両者の違いを意識して聴くのならば問題はないのだが、日常の会話の中で意識することなく聴きとるのは難しい。少なくともわたしの場合は。

ただ、多くの場合、聴き分けられなくとも全体の文意から判別できるので、実用上支障をきたすことはほとんどない。逆にこれが聴き分ける能力の育成を妨げているとも言えるのだが。わたしの場合は大学の第二外国語で中途半端に中国語を学んでしまい、発音が完成したのが中上級レベルに到達してからだった。これが聴き分け能力に影響を与えている可能性が高い。

その意味では、発音はやはり初級のうちに固めておくのが望ましいのではないだろうか。

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