ハイリスクな中国語キャリア

前項「キャリア形成としての中国留学」では中国留学の主体となる「仕事」グループを次の3つに細分化しました。

  • 1.中国赴任予定者及び国内中国関連部門担当予定者等の実務労働者グループ
  • 2.グループ「1」の職を希望するリクルート(就職転職)目的グループ
  • 3.通訳翻訳中国語講師等の中国語専門職志望グループ

本項はこれを受けてビジネス需要という観点から中国語と中国留学について考えていきたいと思います。

ハイリスクな中国キャリア

グループ2の主体は学生と20代の若年労働者です。好調が続く中国経済を反映してか、キャリア形成の一環として中国語を選択する若者が増えてきています。

これをターゲットとした中国関連職の就職転職ビジネスも盛んになってきており、中国での現地採用を含めた中国関連職の就職転職斡旋サービスを提供する企業も次々と誕生しています。

そしてこれら企業から中国ビジネスの将来を楽観視する情報が洪水のように発信され、これが若者たちをして中国/中国語をキャリアとして選択させる......このような雪だるま式の発展を見せているのがここ数年の中国キャリアビジネスの現状ではないでしょうか。

私は中国ビジネスの将来性を否定する者ではないのですが、過度の楽観視は危険だと常々感じています。経済の専門家ではないので中国経済及び中国ビジネスに関する詳細な分析は割愛しますが、門外漢の私から見ても「中国/中国語」にすべてのキャリアを託してしまうのは結構ハイリスクです。

ビジネス界の中国語需要

グローバル化が進むビジネスの世界ですが、このビジネス界ではでは英語が圧倒的な優勢を占めています。

よく中国語教材の宣伝文句に13億云々とあるように、中国語は使用人口は圧倒的なのですが、基本的に中国、台湾、シンガポール程度でしか通用しません。

一方で英語は公用語、準公用語としている国が多く、且つ多くの国で第一外国語として採用されていることもあり、普及率は中国語の比ではありません。特に世界最大の経済大国であるアメリカが英語を公用語としていることも英語に非常に大きな競争力を与えています。

これはビジネスの世界にもそのまま反映され、さらにビジネスに限って言えば共通語の地位は既に英語で確定したと言っても過言ではない状態にあります。

このため、たとえ中国ビジネスと言っても、中国側との商談は英語で行われるのが主流です。中国でも海外相手にビジネスを行う企業は英語が堪能な人材を取り揃えているためです。

もちろん中国ビジネスに携わる以上中国語は大きな武器になることは間違いありません。しかし、一個人のキャリアという観点から見れば、中国語は英語に比べ活用できる範囲が圧倒的に小さいことも事実です。英語が中国ビジネス「でも」使えるのに対し、中国語は基本的に中国ビジネス「でしか」使えないのですから。

中国ビジネス「でしか」使えない以上、中国語のビジネス需要は中国経済に大きく依存することになります。中国が大市場であることは動かしがたい事実ですが、どんな市場でも景気による浮き沈みは発生するものです。

中国経済が好調な間はいいのですが、一旦景気が後退し、且つ不運にも不景気が長引いてしまったりなんかすると、中国キャリア一本にかけている方はその余波をモロに食らうことになるでしょう。

その一方で英語は一国一地域の経済に左右されることはありませんから、グループ2に所属するような方は、中国語学習意欲に水を差してしまうようで何なのですが、まず英語を優先した方が無難だと思います。

特に就職対策として中国語の習得を考えている現役学生の方には、先に英語を習得されることをおすすめします。英語を習得といっても、TOEICでBクラス(730以上)を取得するだけで十分です。学生だったら、その気になれば1年そこそこでTOEICで730ぐらいはクリアできます。

新卒で就職活動する場合はTOEICで730あれば十分ないので、まずはTOEICでBクラスを取得してからでも中国語は遅くないと思います。

既に社会人で、中国語を使った仕事をしたいということであれば、時間の都合上英語は捨てて中国語を勉強するより他ないのかもしれません。ただし、場合によっては人生の選択の幅を狭めてしまうこともあります。それだけは覚悟しておいてください。