標準的中国語発音習得への道

北京人の発音は標準か?

普通語の発音は北京語がベースになっているので、北京人の発音が標準である、という発想がありますが、これは間違いです。北京語の発音では母音「er」が多用されるなど、独特の特徴を持っています。

北京語は巻き舌で発音することが多いと言われています。特に「老北京」といわれる、生粋の北京人の発音はこの傾向が強くなります。

なお、巻き舌音が多いと言うと舌が機敏に動いているような錯覚を与えますが、現実には舌を機敏に動かしているのではなく、舌を巻いたまま動かしていないだけです。

要は怠けているのですが、そのせいで音がくもった感じになり、発音がはっきりしなくなります。南方出身の人の普通語の方がよっぽど聞き取りやすいです。

それでいて自分の発音が標準である思い込んでいるので、余計に厄介です。

標準音は人工音

中国人の中で普通語を完全に発音できる人はごくわずかです。というよりも厳密にはアナウンサー以外は不可能です。これは、中国語の標準発音は言語の統一のために作られた官製の人工音であるからです。

アナウンサーを養成する学校では、1-2年かけて発音を矯正させます。ネイティブスピーカーである中国人ですら長期間専門的に特訓させられるのですから、日本人に何とかなるものではありません。

私の中国人の知り合いの中には、アナウンサーの発音は不自然であると思っている人もいます。もともと人工的に加工されている要素が多いだけに、そう感じるのも無理はありません。

「きれいな発音」って

実際の話、発音ついてはセンスによるところが大きくなります。これは語学についてのセンスというよりも、音に対するセンスといった方がいいかもしれません。

センスがある人は短期間で中国人のような発音が身につきますが、センスに欠ける人はいくらやっても日本人的な部分が抜けません。残念ですが、これは努力ではどうにもなりません。

でも「自分はセンスがないから」とガッカリすることはありません。私は過度に標準的な発音を追及する必要はないと考えています。日本人なのですから、日本人的ななまりがあっても良いではないですか。ある意味、その方が自然です。

一般に正確な発音のことを「きれいな発音」と言いますが、個人的にはこのようには考えていません。

「きれいな発音」とは、相手にとって聞き心地がいい発音と考える方がより好ましいのではないでしょうか。

無理に標準的な発音をするよりも、多少標準から外れる部分があった方が個性的で魅力があるように思います。

実用的には十分に聞き取れるだけの発音さえできれば発音については問題になることはありません。大切なのは会話の内容です。

たとえ発音が正確でも、会話の内容が教養に欠けたり、内容の浅いものだったら、相手から尊敬を受けることはできません。

ある程度まで発音が上達したら、表現力を磨く方に重点を置くことが肝要だというのが、中国語の発音に関する私の考えです。

推奨発音学習コース

いろいろな方向へ話が飛んでしまいわかりにくくなってきたので、最後にまとめておきたいと思います。

中国語の発音を学ぶ場合、まずは市販の発音学習教材を利用して発音の練習をしておいてください。

正しく発音できているかどうかわからなくてもいいので、ピンインをしっかり覚え、ピンインを見たら唇の形や舌の位置などが思い浮かぶようにしておいてください。

市販の発音学習教材も多数出版されていますが、ここでは次の2冊をご推薦しておきます。

『発音の基礎から学ぶ中国語』 相原 茂 (著)

『中国語発音の基礎 CDブック』  上野 恵司 (著)

この他、近年声調を矯正できるソフトウェアが開発販売されるようになってきています。

声調を波長を使って表示し目視しながら矯正できるという優れもので、価格的にも比較的安価なので、声調矯正用として購入されることをおすすめします。

次に発音講座に行きます。日本人講師がおすすめです。ネイティブスピーカーがチェックしてくれるようなところがあればなお良いでしょう。

なお、いきなり発音講座に行くより、事前に独学で学習しておく方が学習効果は高くなります。発音講座では、復習と矯正をしてもらうつもりで行くぐらいでいいでしょう。

せっかく高い授業料を払うのですから、自分でできることは自分でやっておく方が賢明です。費用効果が高くなります。

最後に仕上げとして中国人に矯正してもらいます。国内でよい講師を見つけられればいいのですが、資金と時間に余裕があれば、短期留学することをおすすめします。

発音を矯正することを目的とするので、留学先はハルピンの大学がいいかもしれません。ハルピンの発音が最も標準に近いと言われていますから。もちろん北京でもいいのですが。

短期留学のすすめ

なお、短期留学の利点は発音の矯正ができることだけに止まりません。短い期間でも、中国を肌で感じることができるのは、今後の学習を進める上で大きな意味を持つこととなります。

中国人の友人ができればペンパルになってもらえるかもしれません。チャット友達なんていうのもいいかもしれません。

たとえ片言であっても、言葉が通じた喜びは何物にもかえられません。さらに学習を進めていこうという原動力になります。特に以後長期留学する予定がある場合は、短期留学の経験は留学にありがちな失敗を防ぐ上で大きな役割を果たします。

お金と時間がかかることなので、すべての学習者が経験できるわけではないでしょうが、もし本格的に中国語を学習するつもりでしたら、生活費を削ってでも短期留学してみることをおすすめします。

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