中国語通訳と翻訳 … 花形職業の現実

中国語と英語の二ヶ国語習得を目指すのは良いが、それぞれどの程度のレベルが必要になるのだろうか。

一言で片付けてしまうのならば、それは人によりマチマチである。語学の習得はそれそのものが目的ではなく、なんらかの目的を達成するための手段でしかないことを肝に銘じておかなければならない。語学に没頭すると、語学そのものが目的化してしまいがちだが、それは望ましくない。単なる趣味で語学をやっているのならばそれでいいのだが、キャリア形成や就職対策として考えているのならば、言語そのものに惚れ込むのはあまりよろしくない。

人によりマチマチ、とは言っても、考えられるケースごとに対象を絞れば、ある程度はこの問いに答えることができると思う。ここからは、この点について少し考えてみたいと思う。なお、二ヶ国語の習得を考えている者は、そのほとんどが大学生であると思われるので、ここでは一先ず大学1年から語学を始めることを前提として考えてみたい。

メインは英語

英語をキャリアのメインとするのか、それとも中国語をメインとするのか、それとも「英中2トップ」を目指すのか……。まずはここから考える必要があるだろう。

英語がメインならば、やはりTOEICスコア900を目指すべきだ。TOEIC900というとものすごいレベルのように感じるかもしれないが、その実は中級修了程度のレベルでしかない。そもそもこの手の統一スコア制試験は、高スコアになると実力が正しく反映されなくなるので、上級者の実力を正しく測るには向かない。900と950の差は、700と800のそれより大きいのだ。このため、TOEICは中級レベルを測定する試験であると考えた方が良い。これは、同じくスコア制を採用する中国語のTECCも同様である。

すこし話がそれたが、ここで言わんとすることは、TOEICの900は、その実と世間の評価の乖離が大きいので、就職転職対策としてTOEIC900を引っさげていくのは「費用対効果」が高い、ということである。大学1年目から始めると仮定した場合、2年終了時までに900に到達することを目標とすれば良いだろう。学生ならば、2年あれば十分可能である。もともと英語が得意ならば、1年もあれば到達できるだろう。

それから中国語を始めるのだ。中国語はなんだかんだ言って中検だろう。TECCはTOEICと比較しやすいが、知名度が低い。HSKは中国政府公認が売りだが、こちらも国内では知名度が低い。また、HSK本来の位置づけは英語のTOEFLに当たるものなので、中国に留学するのでなければ、受検する意味はあまり大きくない。

英語がメインならば、取り敢えず中国語は中検3級を目指すべきだ。少なくとも、3級ならば履歴書に書いても違和感はない。また、中検3級は、実用上でもそこそこ使えるレベルである。少なくとも、就職後本当に中国語が必要になっても、大慌てすることはないだろう。

中検3級ならば、ゼロから始めても1年あれば到達できる。3年目は中国語に傾注して、就職戦線に間に合わせるのだ。最悪でも4級を取得しておけば、「中国語も始めています。」とアピールできる。4年目は、英語が不安ならば英語を、中国語を伸ばしたいのならば中国語に時間を配分していけば良い。

中国語が主軸

中国語を主軸に据えるのならば、TOEICは800程度で十分であろう。800でも資格としては世間的に十分に通用する。800から900への道のりは600から800よりも険しいことを考えると、800以降に費やす時間は中国語へ回すほうが賢明だろう。

では700ではダメなのか、と思われるかもしれない。確かに700あれば履歴書でアピールすることもできるだろう。ただし、英語力としては、700程度はまだ不安定で、中国語に切り替えた後、英語力を維持するのにかかる労力が大きくなる。もちろん、700といってもそれはあくまで試験の結果でしかなく、その実800以上の実力を持っているという人もいるので、あくまで参考値であることを付け加えておく。

TOEICで800ならば、その気になれば1年で到達できる。百歩譲って2年かかったとしても、大学生活はまだ2年残っているのだ。これなら中検2級は射程圏内である。準1級も十分に狙えるだろう。

英中2トップ

英語と中国語のいずれも妥協したくない、という強い意志を持っているのならば、二ヶ国語トライリンガルを目指してほしい。英語はTOEICならば900、中国語は中検準1級が最低ラインである。ざっくり言ってしまうなら、はじめの2年でTOEIC900、次の2年で中検準1級を取得する。可能ならば、学習計画に語学留学を差し込むと良いだろう。これは経済力も必要になるので誰しも実行できるものではないが、比較的自由に留学できるのは学生のうちだ。社会人になってからでは遅い。厳しいことを言うようだが、社会人で仕事を辞めて語学留学しているようでは勝ち目は薄い。

インターネットが普及した現在、単なる語学のための留学はメリットが小さくなってはいるが、それでも外国語の言語空間で生活するという経験は何物にも代えがたい貴重なものである。また、日本で学ぶのに比べ日本語を遮断しやすい環境にあるので、誘惑に負けやすい人でも、比較的容易に外国語漬けの環境を構築できる。これらの点からも、可能ならば是非留学を考えてみてほしい。

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