番外編:私的中国語発音習得への道

参考になるかどうかわからないが、私の発音習得について振り返っておきたい。

発音軽視だった日本時代

私の発音習得の道は平坦なものではなかった。というか、寄り道遠回りばかりだった。結果として、私の発音の完成は中級の終わり頃までずれ込んだ。

このような事態を招いたのは、やはり入門初級レベルで発音をいい加減に扱ってしまったためである。なぜそのようなことをしてしまったのか……答えは簡単である。私が中国語をはじめたきっかけは大学の第二外国語だったためだ。

しかも、私が中国語をマスターしようと一念発起したのは第二外国語の必要単位を取得した後だった。当初は単位取得しか考えていなかったので、マスターしようという気などさらさらなかった。故に発音はいい加減極まりないものだった。

一念発起した後も、しばらくの間は発音を重視していなかった。重視していなかったというと語弊があるかもしれない。留学するつもりだったので、発音は中国で矯正すればいいかな、と気軽に考えていたのだ。

また、日本でお世話になった大学の中国人講師は中国語教育の専門ではなく、法律研究の片手間で中国語を教えており、発音を重視していなかったことも災いした。

留学したものの……

では思惑通り留学してすぐ発音の問題が解決したのかというと、今となっては当たり前の話だが、そんなに単純なものではなかった。

まず第一に、なまじっか日本で勉強してしまったがために、クラス分け試験でいきなり中級クラスに振り分けられてしまったのだ。このクラスは中国でゼロから中国語をはじめて1年修了したレベルで、授業で発音を教えることなどはしなかった。

このため、中国でも発音は独学となった。もちろん、周囲は中国人だらけなので、発音矯正のためのネイティブを探すのは簡単であったが、問題は発音矯正能力のある中国人になかなか出会えなかったことだ。

学生を家庭教師に雇って取っ替え引っ替えしながら矯正を続けたが、的確に教えられる者にはなかなか出会えなかった。中にはまったく的の外れた解説をして私を混乱させる者もいた。

結果的には、2学期目に出会ったアナウンサー学科の学生の指導のもと、ようやく「正しい」発音が何なのかを理解し、完全ではないがほぼ標準音で発声することができるようになった。この学生に出会うことができたのは北京第二外国語学院に留学していたためだ。この大学のすぐ隣に先に紹介した中国传媒大学(当時は北京广播学院という名称だった)があり、この大学で学ぶ中国人学生に紹介してもらったのだ。

「u」に苦戦

このアナウンサーの卵には広範囲に矯正させられたが、一番苦戦したのは「u」の発音だった。それまで苦しんでいた「r」は真夏のアイスクリームのようにあっさりと氷解したが、「u」はなかなか身につかなかった。ちなみにこの学生もわたしに「u」を教えているうちに自分自身の「u」の問題に気づいたらしく、彼女が再習得したものをわたしがまた習得しなおすというオチもあった。

そして発音の矯正は数ヶ月に及んだ。染み付いた発音を強制するのは大変だったが、まだ鉄は熱かったので曲がりなりにも標準音を身につけることができた。そして、十余年を経た現在、ここでこんな偉そうなことを書いているのである。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
Time:
2013-05-02