中国語のススメ

かつて、中国語はマイナーな言語でした。

大戦後異なる東西異なる陣営に属した日本と中国。日本においては中国の存在そのものがマイナーでした。大学の第二外国語はフランス語やドイツ語のようなヨーロッパ言語が主流で、中国語は単なる物好きの道楽のタネでしかありませんでした。

流れに変化が訪れたのは三十余年前、中国大陸で覇を唱えた共産党政権との国交回復に遡ります。その後中国の改革開放と経済成長によって日中間の経済活動が活発化、ビジネス中国語特需に沸いた中国語は一気に第二外国語筆頭の地位を占めるに至りました。

経済成長の中で体制の矛盾に起因する社会の歪みが拡大し、「いずれ崩壊する」と言われながら突っ走って来た中国。気づけば経済の日中逆転がカウントダウンを迎えるところまで来ています。今やその経済的存在価値から諸外国(特に覇権国アメリカ)にとって「崩壊させられない(崩壊はアメリカの利益に反する)国」になりつつあるのです。

「21世紀は中国の世紀」という表現は、既に人口ボーナスのピークアウトもカウントダウンを迎えていることを考えると誇張としか言えませんが、多極化を迎える中でその中の一極を中国が占めることはほぼ間違いない情勢にあります。

ただ、中国経済がピークアウトしても、日本にとって中国がすぐ隣にある巨大市場という位置づけは変わりません。中国語に「痩死的駱駝比馬大」(やせて死んだラクダでも馬よりは大きい)という言葉がありますが、日本人にとって中国語は英語に次ぐ経済的価値のある外国語という位置づけは地理的要因から見ても不変なのです。

学びやすい言語

中国語は難しいと(特に中国人から)よく言われますが、実は言語そのものを見た場合、日本人にとって中国語は英語より学びやすい言語です。

もちろん英語は中高の学校教育の中で学んでいるというアドバンテージがありますので、それを考慮に入れれば英語をしっかりと学んできた人にとっては英語の方が有利ですが、もし成人後にゼロから始めるなら中国語の方がラクでしょう。

中国語の方が学びやすいのは日本人が漢字に精通しているところにあります。現在では字体こそ多少異なっていますが、起源を辿ればいずれも同じ漢字です。漢字を母語で使わない人にとって、漢字は中国語習得の大きな障害となりますが、日本人はその母語の中で1945字もの漢字を常用漢字として採用しているため、およそ正規の教育を受けた日本人ならば、漢字が中国語習得の障害になることはありません。

ちなみに中国で常用字として指定されているのは2500字。完全に重複する訳ではありませんが、この数字からも母語で漢字を使う日本人が如何に有利なのかわかります。

また、古代においては中国から日本へ、また近代以降においては日本から中国へ語彙が輸出入されているので、多くの共通する語彙を持っています。実用上必要になる文法的知識も英語に比べ単純です。

壁となるとしたら発音でしょうか。現代標準中国語(普通語)の発声構造は日本語のそれとまったく異なり、声調のような日本語にない概念も存在するので、これに躓く日本人は少なくありません。特に発音は一番始めに学ぶものなので、これが難しいという印象を与える原因になっているのかもしれませんね。

逆に言えば、これを乗り越えてさえしまえば、後は平地を行くがごとくなるものなのです。

また、商用という観点から言うと会話は外せませんから発音は無視できませんが、単なる趣味として、中国語で中国の古典を楽しみたい、というだけの話なら発音は重要ではなくなります。

老後の嗜みとして考えているのなら、これほど学びやすい言語は他にないでしょう。

中国語のススメ

ビジネススキルとして外国語を学ぶなら、やはり英語は外せないでしょう。その上で差別化を図りたいのなら......やはり中国語になるのではないでしょうか。すぐ隣にある巨大市場で使われている言語なのですから。

英語はキライ、アルファベットは見たくない、でも外国語をやってみたいのなら......やはり中国語になるのではないでしょうか。英語を除く外国語の中で最も経済的価値が高い言語なのですから。

人生半ばを過ぎて、経済的理由なしに外国語を考えるのなら......やはり中国語になるのではないでしょうか。日本人にとって親しみやすい言語なのですから。

中国はキライである。中国はやがて日本を侵略するであろう。日本を守らねばならない、とお考えなら......やはり中国語になるのではないでしょうか。敵に勝つには敵を知る必要があり、そのためには敵国言語能力が欠かせないのですから(笑)。

早い話、地理的歴史的要因から言語文化的に日本語と最も密接な関係にあり、13億プラスα(αは神のみぞ知る数字)の人口と25倍の面積(砂地も多いけど)を抱える国がすぐ隣にあるのです。たまたまそこで使われている言語が中国語だったという話です。