【比較検証レポート】最強の中国語電子辞書決定戦 2008年の陣 ワードタンクV903 VS エクスワード VS パピルスPW-LT220

序文

各メーカーの中国語モデル新機種が出揃った。先手を打ったのが電子辞書シェアNo.1のカシオ。エクスワードの新中国語モデルを他社より2ヶ月近く早く市場に投入。これに対して中国語電子辞書の王者キヤノンは一般向けと上級専門家向けに分けていたラインナップを一本に絞って、名実共に究極のマシンとなった「wordtank V903」を余裕の三月末投入。自信の程が伺える。ただ単に遅れただけかもしれないがw。

そして中国語電子辞書の新星シャープも三月下旬にパピルスの新中国語モデルをリリース……パピルスは以前から中国語モデルがあったって?以前のモデルは語るに及ばないものだったので評価対象外。今回はじめて評価に値するモデルを投入してきた、という意味である。

各社それぞれ新機能を搭載しており、技術の進歩を感じさせてくれる。昔は収録コンテンツ的に台湾製の電子辞書に劣っていた時代もあったが、そんな話も今や昔。もともと繊細な日本人が編纂した辞書は中国のものに比べ使いやすく、技術力は申し分ありませんから、精密さと繊細さが求められる電子辞書は日本製で決まりであろう。もう海外製になんて目をクレル必要はない。

シャープが今作でようやく中国語手書き入力機能をサポートしたので、中国語電子辞書はキヤノン、カシオ、シャープの三国時代を迎えることになった。王者キヤノン、対抗馬カシオ、新星シャープ……三国志を借りて喩えるなら中原の覇者キヤノン、江南を固めるカシオ、そして蜀に篭ったシャープみたいな感じか。早い話「一強二弱」みたいなものだ。

閑話休題。本項では各社電子辞書の比較に重点を置いてまとめる。各社それぞれの電子辞書の機能や評価についてはそれぞれ個別に評価しているので、別途参照のこと。

また、収録辞書コンテンツは、中国語電子辞書比較表 (2008)を参照のこと。

目次

評価について

本レポートでは主要3社の中国語電子辞書を項目別に比較して、ポイントを与える。エクスワードは標準機種と上位機種に分けれているが、コンテンツ比較については便宜上上位機種を採用する。

また、基本的に3社共通のものは評価の対象外とする。例えばネイティブ発音や、旅行会話コンテンツ等である。殻の強度とか比較の難しいものも対象外とする。特に中国語電子辞書として重要になる項目に絞って評価を下す。

評価方法は当該項目の重要度に応じて点数を配分し、その点数を各社の電子辞書の機能に基づいて各社に再分配する方式を取る。最後に点数を見ればどの程度の差があるのか一目瞭然……になるはずだ。

ただし、使用者の中国語レベルや用途によって各々重視するものは異なってくるので、総合スコアはあくまで参考とすること。

1.メイン中国語辞典

配分スコア:10

中国語電子辞書なのだから、もっとも重要なものは収録辞書コンテンツである。特にメインの辞書となる大型中国語辞書はその要となる。

一昔前の電子辞書に収録されていた辞書は書籍のものに比べ古いものが中心で、それが電子辞書購入のネックにもなっていたのだが、この現象はここ1~2年の間に大幅に改善されている。

そのため収録辞書の新旧は各社一律評価。ここで差が出るのは上級・専門家向けの辞書コンテンツとなる日本最大の中国語辞書『中日大辞典 増訂第二版』が収録されているか否かにかかってくる。

キヤノンとカシオには『中日大辞典 増訂第二版』が収録されているが、シャープのパピルスは未収録。ここからもシャープは入門初級レベルに絞ってマーケティングしているのが見て取れる。

なお、この辞書は入門・初級レベルの学習者にとってはあまり重要ではないので、これから中国語を勉強する、という場合は、この項目はパスしてしまってもよい。末永く使いたい、という場合は別だが。

配点

キヤノン
カシオ
シャープ

2.サブ中国語辞書

配分スコア:5

新語辞書やコンピュータ用語辞書がこれに相当する。メインに相対してサブ、という位置づけだ。重要性はメイン辞書に劣るが、あると助かることも多い。使い込んでいくと、その存在意義を強く感じることになるだろう。

ここに分類される辞書コンテンツについて、3社の電子辞書を列挙する。

キヤノン

  • 日中パソコン用語辞典 改訂版
  • 日中英・電子技術用語対訳集
  • 現代中国語新語辞典(電子版)
  • 人名発音ナビ
  • 中国語のEメール表現

カシオ

  • 日中パソコン用語辞典
  • 日中英・電子技術用語対訳集 第2版
  • 中国語 新語ビジネス用語辞典 Ver.2.2
  • 日中英固有名詞辞典

シャープ

  • 中国語 新語ビジネス用語辞典

一目瞭然である。キヤノンとカシオはほぼ同等、シャープは目立って劣る。

配点

キヤノン
カシオ
シャープ

3.中中辞書

配分スコア:4

中中辞書とは、要は中国人にとっての国語辞典である。本来は中国人が中国語を調べる際に使うものだが、我々日本人が中国語を学習するのにも役立つ。

辞書を引くだけでリーディングになる上、中日辞典ではなかなか伝わりにくい語感を身につけるのにも効果的である。中級以降の学習者にとっては非常に有意義な存在であろう。

この辞書を収録しているのは、現状ではワードタンクのみとなる。中級以上の学習者にとっては電子辞書の選択の余地をなくしてしまう重要なポイントである。

配点

キヤノン
カシオ
シャープ

4.英中中英辞書

配分スコア:4

英語習得者で、新たに中国語を学習するユーザ、または中国語をマスターして今度は英語に挑戦、というユーザ、もしくは英語と中国語を同時に勉強してやる、という野心的wなユーザに魅力のコンテンツ。

いわゆるプロ需要という点から考えても、中日辞書では出てこないが中英辞書なら出てくるような語彙もあるので、このコンテンツの重要性は小さくない。

このコンテンツもワードタンクの独壇場。凄いの一言。

配点

キヤノン
カシオ
シャープ

5.学習

配分スコア:6

近年の電子辞書は学習用コンテンツの充実振りが目立つ。データ容量に余裕が出てきたためであろう。各社とも差別化の切り札として、様々なコンテンツを収録し始めている。

一般に電子辞書に収録されている学習コンテンツは入門初級者向けのものが多いので、このレベルを修了している使用者にとっては、本当にどうでもいい機能でしかないのだが、一方これから中国語を始めるユーザにとってこれほど有意義なものはない。テキストにせよ通信教材にせよ、電子辞書に収録されているものを別途購入するとなれば結構な出費となる。それがセットになっているのだから万々歳である。

加えて辞書と連動しているので辞書の確認もラクラクである。本当にいい世の中になったものだ。

ここに分類されるコンテンツについて3社のコンテンツを列挙する。

キヤノン

  • 中国語会話パーフェクトブック

カシオ

  • ピンイントレーナー

シャープ

  • はじめての中国語学習辞典
  • 必ず話せる中国語入門
  • ゼロからカンタン中国語 場面別スキット

これまでは劣勢だったシャープパピルスがここで光を放った。入門初級レベルにユーザ対象を絞っているのが明確である。特に注目なのが「ゼロからカンタン中国語」の会話スキットが収録されているところであろう。これは旺文社の入門者向け中国語通信教育教材で、3万円以上する代物である。これを考慮して考えるのならば、これから中国語を始める、というユーザにとってはおいしい買い物かもしれない。

配点

キヤノン
カシオ
シャープ

6.方言

配分スコア:2

方言に興味があるユーザには魅力のコンテンツ。その地方で働いたり、その地方に出張するようなビジネスパーソンにはうれしい機能である。純粋に普通語(中国語標準語)を学びたいという学習者には必要ないが。

このコンテンツはワードタンクの独壇場。このようなマイナーなコンテンツまで取り込んでしまうところにキヤノンの中国語電子辞書に対するこだわりを感じる。

配点

キヤノン
カシオ
シャープ

7.学習補助機能

配分スコア:6

最近の電子辞書は、MP3プレーヤーのような学習補助機能を搭載するようになった。単語の音声は言うまでもなく、再生速度を変速する機能、そしてSDカードやUSB接続で市販の音声コンテンツを取り込んで再生する機能は3社共に搭載している。単語帳や単語カードのような語彙学習補助機能もこれに同じ。

この他パピルスとワードタンクはリスニング学習機能が充実しており、ワードタンクはさらに自分の発音を録音して標準の発音と比較できる機能がついているなど、まさに至れり尽くせりである。

配点

キヤノン
カシオ
シャープ

8.その他

配分スコア:5

上述の各機能、コンテンツの他に評価の対象となるものに検索機能がある。検索機能は相性や慣れもあり、それぞれ使い込まないと何とも言えないものであるから、敢えてここで云々することは控えておくが、キヤノンの新しい試みは注目に値します。

ワードタンクV903では方言間の差異を比べることができる「中国語地方言語リンク」と、言葉を有機的に関連付けて関連項目や類語から対象となる言葉を検索する「中国語概念リンク」という新しい検索機能が搭載されている。

方言比較検索は方言コンテンツの追加を反映したものだと思うが、「中国語概念リンク」というのは真新しい機能である。精度がいかほどのものなのかは使い込んでのお楽しみだ。

この他、ワードタンクV903ではUSB接続することで、パソコンのテキスト文の中の語彙を選択して辞書を引くことができる点も注目である。他の電子辞書もUSB接続はできますが、ただ単に音声コンテンツやテキスト文を取り込んだり入れ替えたりするだけのものだから、ワードタンクの高機能性には目を見張るものがある。

あと、これは機能の話ではないのだが、エクスワードは入門初級者向け標準バージョンと『中日大辞典 増訂第二版』を収録して画面も大きくなった上位機種バージョンに分かれている。選択の余地がある、というのも評価して良いのではないのだろうか。

配点

キヤノン
カシオ
シャープ

集計

項目
(スコア)
メイン
(10)
サブ
(5)
中中
(4)
英中中英
(4)
学習
(6)
方言
(2)
学習補助
(6)
その他
(5)
総計(42)
キヤノン 4 2 4 4 1 2 3 4 24
カシオ 4 2 0 0 1 0 1 1 9
シャープ 2 1 0 0 4 0 2 0 9

総括

キヤノン圧勝。入門初級レベルから上級専門家レベルまで、幅広くカバーした史上最強のマシンとなっている。一方でパッとしなかったのがカシオ。前バージョンの対比ではキヤノンと互角とは言わないまでも、それなりの存在感があったのだが、新バージョンでは明らかに差を開けられてしまった。

2ヶ月近く先行して市場投入したのである程度ユーザの囲い込みはできたと思うが、キヤノンのこの圧倒的なスペックを見せられると今後は厳しいかもしれない。前作の90シリーズのように液晶画面が暗くて見づらいとかいうくだらない欠点でキヤノンがつまづいてくれない限り、厳しい戦いを強いられるだろう。

そして中国語簡体字手書き入力機能を搭載してようやく土俵に上がることができたシャープ。今作は対象を入門初級に絞っているところがミソである。王者キヤノンと正面衝突するのではなく、需要の大きいであろう入門初級レベルに資源を集中している。

入門者向けの学習コンテンツの充実振りは群を抜いているので、これから中国語を!という入門レベルの学習者にとっては魅力的な電子辞書となっている。戦略勝ちだ。

最後にまとめる。個人的にイチ押しなのはやはりワードタンクV903である。コンテンツ、機能共に圧倒的で文句のつけようがない。入門者から上級、プロまで、これで決まりであろう。

ただし、入門者の場合はパピルスという選択もある。入門者向けのコンテンツが充実しているので、それを計算に入れればお得な買い物になる。中級レベルに達している頃にはまた新しいバージョンが出ているだろうから、そのときにワードタンクの次期新バージョンに乗り換えれば良いのだ。

カシオは「エクスワード大好き」というコアファンでもなければ選択肢には上らないかもしれない。入門レベルではシャープに及ばず、中上級レベルではキヤノンに及ばず……。前作では二強の一角を占めていたカシオ。今作のパフォーマンスは残念でならない。

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