中国語の漢字と日本語の漢字

古代、日本は中国から文字を輸入しました。日本人はその後漢字から平仮名と片仮名を作り出しましたが、漢字は淘汰されることなく、千数百年を経た現在に至るまで主要文字として使用してきています。

このように日本語の一部分と化している漢字ですが、もともと漢字は表意文字でもありますので、中国語の漢字と日本語の漢字の意味するところは現代においてもほとんど変わりません。これらは日本人が中国語を学習する上で最大の利点と言えるでしょう。

簡体字とは

とは言っても日本が漢字を輸入してから既に1千年以上を経ており、部分的に相違があることは否めません。

現在中国で使用されている漢字は日本で使用されているものと多少字体が異なります。

中国(大陸)で使用されている漢字は「簡体字」と呼ばれる省略字で、従来の漢字である「繁体字」から見ると画数が随分と少なくなっています。

日本で使用されている漢字も省略形ではありますが、省略方法が簡体字と違うので、必ずしも同形とはなっていません。

時折漢字の統一を望む声を耳にしますが、おそらく統一は不可能だと思われます。なお、漢字の簡略化の話は本題から外れるのでここでは割愛します。

古中国語漢字の保留

一般に、日本語で使用されている漢字は古中国語の漢字の意味をそのまま保留していると言われます。

例えば、日本語の「犬」は中国語では文語体で口語では「狗」を使います。また、日本語の「赤」も中国では文語体で口語では「紅」が使用されています。

全般に日本で使用されている漢字は中国では書面体に用いられることが多く、日本人学習者にとっては口語が盲点になることがよくあります。

特に国内学習者は会話の機会が少ないので、これら口語体の中国語を苦手とする人が多いようです。

中国語の漢字と日本語の漢字の相違点

私たち学習者が最も気を使わなければいけないのは、日本と中国の漢字には一見似ているようでも、よく見ると違うという漢字が含まれていることです。

例えば「骨」の字です。中国語の「骨」は上部の冠の中の小さな四角が、左についています。日本語は見てのごとく右側についています。

また、全般的に中国語の簡体字の方が画数は少なく便利なので、日本語の中でも無意識に簡体字を使用してしまうようになります。

自分しか見ないようなメモ書きならいいのですが、他の人が見るような文章や、正式な文章ではそうはいきません。中国語を知らない人から見れば誤字でしかありません。私も履歴書の中で使用していることを後になって発見し、青くなったことがあります。

外来語の処理

現代日本語と中国語で最も大きな差異があるのは外来語の扱いです。現代日本では外国から入ってきた言葉のほとんどはカタカナで処理されます。「Unilateralism」(一国主義)のような舌をかみそうな言葉でもマスコミはカタカナで通してしまいます。

さらに近年、日本語におけるカタカナの使用は従来の新外来語にとどまらなくなってきています。

「手ぬぐい」は「タオル」に、「草履」は「サンダル」に取って代わられてしまいました。現代日本ではこの方が「ファッショナブル」に聞こえるからでしょうか?

一方中国では、はじめは音訳されていた外来語も後に意訳する傾向があります。

医薬品のペニシリンは、当初は「盤尼西林」(pan ni xi lin)と訳されていたのが、後に「青黴素」(qing mei su)という単語に置き換わっています。

同じく当初は「維他命」(wei ta ming)と音訳されていた「ビタミン」も後に、「維生素」(wei sheng su)に取って代わられました。

日本語と中国語の外来語の処理は対照的で面白いのですが、これにはこれでいろいろな理由があるのでしょう。研究者ではないのでこのような理解が正しいのかどうかはわかりませんが、日中両国語が外来語の処理に使用している文字の特性に原因があるように感じます。

日本語の場合、外来語には片仮名を使用します。片仮名はそれ自体に意味のない表意文字なので、外来語を音訳するのに適した字体です。

一方中国には日本語の平仮名や片仮名にあたる文字がないので、音訳する場合も漢字を使用します。

本来表意文字である漢字の音だけを利用するのですが、漢字はそれ自体に意味を持っているので、音だけを表すには向いていないのでしょう。

居心地が悪いので、単語の意味が浸透していくと自然と最適な漢字を当てるようになるのだと思います。

また、日本人がカタカナを多用するようになったのは、日本人の漢字の素養がそれだけ低下しているのでは、とも思います。

明治時代日本が欧州から新しい思想や概念を輸入した際、明治の知識人たちは的確な漢字を使用して外来語を日本語に翻訳していきました。

彼らは押しなべて高い漢字の素養を持っており、彼らの訳した言葉の多くは後に中国人留学生によって中国へ渡り、現在でもそのまま使用されています。

現代中国人の多くは、それら単語ははじめから中国のものだったと思っています。

逆に言えばそれだけ優れた訳だったのでしょう。漢字の国の人が違和感を覚えないのですから。ちなみにこれらの単語には「経済」や「法律」、「階級」等があります。

また、漢字に対する素養の低下に加え、専門分野の細分化が進んでいることが原因として考えられます。

海外から輸入される新しい言葉には理系のものが多数を占めているのですが、これらの分野に当たる理系の人が文系的要素の強い漢字の学習に割いてきた時間は限られています。日本語に訳したくても訳せないのが実際のところではないでしょうか。

スポンサード リンク


前のページ
中国語の普通語と方言
コンテンツのトップ 次のページ
中国語の落とし穴