中級者の落とし穴

会話慣れしていない場合はとにかく話すことで精一杯なので、場面に合った表現をしているかどうかといった修辞的な要素は二の次です。

そんな初級者も訓練を重ねるうちに上達していき、基本的な会話には不自由しなくなっていきます。ここからが中級のスタートなのですが、実践の場においてはここが一番「危険」な時期でもあります。

中級者の落とし穴

中級者の会話能力の特徴を挙げると、

  1. 基本的な会話の場合相手に違和感を与えないだけの表現力がある
  2. 修辞に関してはまだ問題がある
  3. 言語文化についての知識は学習者によってバラつきがある

といったところでしょうか。ここで発生するのが、「その場にふさわしくない表現を、そこそこ流暢な会話の中でしてしまう」という問題です。

基本的な会話を流暢に行うことができるようになると、中国人である聞き手側は相手が中国語に不自由な外国人である、という意識が薄らいでいきます。

会話の開始直後は多少癖がある発音が気になりますが、会話を続けていくうちに慣れていき、そのうち気にならなくなります。

このような状態の中で場に相応しくない言い回し、特に失礼な表現をすると、非常にネガティブな印象を与えることになってしまいます。

これは日本語に例えると分かりやすいかもしれません。例えば、親しい友人同士ならば「お前」という呼びかけは問題ありませんが、これが初対面の人や目上の人に対して使用されると非常に失礼な表現となります。

もしこの言葉を非常にたどたどしい、明らかに日本語がほとんどできないような人が使った場合、聞き手である日本人側も「日本語が分からないんだな」、と考え、笑って済ませます。

ところが、同じ言葉でも流暢な日本語を操る人にこのような呼びかけをされると、個人差はあれ不快感を覚えるのが普通です。

もしこれが重要なビジネスの場面だったら、笑い事で済まされない結果を招く事だって考えられます。

文化的相違

実際にこのようなケースに遭遇したことがあります。遭遇といっても自分が遭遇したのではなく、友人の話ですが。

これは中国に留学していた時の話です。ある日本人の友人が中国語力向上のため、彼の友人の中国人(私の友人でもあります)と一緒に生活を始めました。

この友人の中国語会話力はちょうど中級レベルで、日常生活には事欠かないレベルでした。しかも中国で中国語を勉強しているので国内で勉強している人と比べて会話力は高いのですが、言語文化的な知識には欠けるところがありました。

ある日、その中国人から会いたいと連絡を受けました。話をすると、同居人との関係がうまくいっていないとのことでした。その大半はコミュニケーション不足に起因するものでしたが、その中でこの中国人が非常に腹を立てていたのが言語文化の相違によるものでした。

彼が何に対して腹を立てていたかと言うと、彼と彼の彼女と二人で食事を作り、同居人の日本人の分も作ってあげた際に、この日本人が言った次の言葉でした。

「謝謝、順便給我作飯」(ついでに作ってくれてありがとう)

日本語的には何の問題もない言葉なのですが、これが中国語になると一大事です。

ここで問題になったのは「順便」(ついでに)です。日本語では相手に過度な負担をかけないよう慮って使う言葉ですが、中国語ではこのような場面においては厳禁です。本当に「ついでに」という意味になってしまうので、非常に失礼な表現になってしまいます。

本来ここでは「特地」(わざわざ)という修飾詞を使う必要があります。日本語で「ついでにお寄りしました」という表現をすることがありますが、このような場合でも「特地」を使って、「わざわざお寄りしました」と言う必要があります。

この一言は深く彼の心を傷つけたようで、私がその中国人に日本語と中国語の言語文化の違いを説明し、同居の日本人には悪気はなかったことをいくら説明しても、最後まで理解してもらえませんでした。

年間契約で部屋を借りてしまっていたこともあり、この後も二人は共同生活を続けていましたが、関係は最後までしっくりいかなかったようです。

ここで言いたいことは、ある一定のレベルに達したら、こういった修辞面にも気を配る必要がある、ということです。不適切な表現が許されるのは初級までであることは頭の中に入れておいてください。

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