会話
- ※記号の意味（重要度は数字が多いほどが重要度が増します。）
- ▽：重要度１
- △：重要度２
- ◇：重要度３
- ◎：重要度４
- ☆：重要度５
- ※同じ級の枠の中でも右に行けば行くほど中国語のレベルが高くなります。
- ※入門終了は中検準四級合格レベル、初級終了は中検三級合格レベル、中級終了レベルは中検準一級、HSK8級合格レベルが目安。
| 入門 | 初級 | 中級 | 上級 | |
|---|---|---|---|---|
| 会話 | ▽▽ | ▽△△△◇◇ | ◇◇◎◎◎☆☆☆ | ☆☆◎◎◎◎◇◇ |
→→→→→→→ 中国語力は右に向かって高くなる →→→→→→
語学の中で最も注目を集める項目が会話です。英会話オンチな日本人の会話コンプレックスから来ているのかどうかはわかりませんが、「会話力＝語学力」という認識が広く根付いてしまっています。
もちろん、これは明らかな誤謬です。繰り返しになりますが、会話は「リスニング、スピーキング、リーディング、ライティング」の四分野の中の一つでしかありません。会話はできるけどリーディングはできない、という人を語学の達人と言うことはできないでしょう。
もっとも、会話は語学の中で一番目立つ技能なので、会話コンプレックスという点を差し引いて考えても、会話信仰が生まれやすいのはいたしかたないのかもしれません。人というものは、どうしても表面的なものに目が行ってしまうものですから。
「会話学習」の定義
さて、本題に入りますが、まずはじめに本項で述べるところの「会話学習」の定義についてはっきりさせておきます。
本項で解説する会話学習とは、いわゆる本格的な会話力を身に付けるための会話訓練のことで、あいさつや決まり文句、旅行会話フレーズの丸暗記は含みません。
また、入門初級テキストのテキスト文は、基本的に会話ダイアログ文となっていますが、これも同じく排除して考えます。
要は、フレーズ単発ではなく、ある程度高度な意思伝達、会話のキャッチボールができる会話力の育成。本物の会話力を身に付けるための学習、と定義しています。
会話学習の要件
表を見ていただければ一目瞭然ですが、会話学習の重要度は中級から上級にかけて集中しています。これは、格的な会話訓練を行うためには、一定の基礎力が必要になることを意味しています。
では、その一定の基礎力とは何か、順に考えていきましょう。まず第一に、発音が完成している必要があります。会話訓練では会話の内容に注意力が集中するので、発音の良し悪しまで気を配ることが難しいのです。
このため、発音が不安定な段階で会話訓練を始めると、不標準な発音が身についてしまう可能性があります。従って、本格的な会話訓練を始めるには、発音が完成する初級後期から中級初期レベルを待つ必要があるのです。
第二に、会話で多用される基本レベルの文法をマスターしている必要があります。これなくしてはブロークンチャイニーズになってしまいますから。
第三に、ある程度のボキャブラリーが必要となります。１フレーズごとに辞書を引いていてはとても会話訓練になりません。
第四に、一定のリスニング力が必要となります。会話はキャッチボールです。発話はできても聞き取れない、では、ボールを投げることはできるけど受けることができないようなもので、会話として成立しません。100%聞き取れる必要はありませんが、文脈と状況から、その内容を十分に推測できるだけのリスニング力は必須です。
また、一定のリスニング力を持っていると、会話力の上昇もそれだけ早まります。聞き取れる、ということは、その表現についてはすでに記憶として定着していることを意味します。となれば、後はそれを口から引き出せるようにすればよいだけのことです。
リスニング力の高い人の方が会話力の上昇が早いのはこのためです。リスニング力と会話力の高い相関性は既に広く認知されています。比較的容易に実践できるリスニング学習を徹底して行っておけば、会話学習がそれだけ楽になる訳ですから、この原理を利用しない手はありません。
このように、本格的な会話訓練を遂行するための基礎要件を列挙してみると、どう考えても中級を待ってからではないと始めることができないことがお分かりいただけると思います。
会話学習の内容
中級レベルにおける会話訓練の内容は、入門初級レベルで学んだ内容とほぼ重複します。要は、入門初級レベルでインプットしたものを、アウトプットできるようにするのです。
入門初級レベル、というと、すごく低いレベルのように感じられるかもしれませんが、日常的に用いられる会話としては、このレベルだけでも十分です。
英語学習法で中学英語教科書を徹底して行わせるものがあるのはこのためです。会話力を身につけたいのなら、学習範囲は中学英語レベルで十分なのですから。
そもそも、日常会話で用いられる表現は単純なものが中心です。日常において、口頭で複雑な表現をすることなんて滅多にないことは、私たち自身の日本語生活を鑑みれば容易に推量することができるものと思います。
上級レベルの会話訓練においては、中級レベルで身に付けた会話力をベースに、多少高度な表現を織り交ぜていきます。高度、と言っても、その実は中級レベルで学習した程度の内容でしかないので高度に感じられないかもしれませんが。でも、会話においてはこれで十分なのです。
会話は熟練度が肝心です。小難しい表現をたどたどしくするよりも、簡単な表現を流暢に行う方が、印象はずっと良くなることを肝に銘じておいてください。