指示代詞

中国語の「指示代詞」の「指示」対象としては「人・もの」「場所」「状態・方法」「程度」「数量」「時間」がある。

中国語の「指示代詞」には“这么/这样”(こんな/このように)“那么/那样”(あんな/あのように)のように様態を指示するものも含まれるので,「指示代名詞」とすることはできないが,ここでは便宜的に日本人にとってなじみの深い「指示代名詞」という名称も併記する。

“这”と“那”

日本語では「これ/この/ここ」「それ/その/そこ」「あれ/あの/あそこ」と3段階で遠近関係を分類するが,中国語は話し手から近いものを指す“这”と遠いものを指す“那”の二分法を取り,日本語の「それ/その/そこ」に相当するものはない。日本語の「それ/その/そこ」は場面状況に応じて“这”を充てたり“那”を充てたりする。

“这”系列“这”“那”“那”系列
これ/この/ここそれ/その/そこあれ/あの/あそこ

人・もの

「人・もの」を指す指示代詞には,単独で名詞の代わりをする「これ/それ/あれ」と,修飾語として名詞の前に置く「この/その/あの」の2種類がある。

近称遠称疑問補足
这个那个哪个
这些那些哪些「すこしの,いくらかの」などまとまった量を表す

“个”のような量詞を伴わない“这”“那”は「是」構文の主語の位置に用い,目的語の位置などでは用いることはできない。

ここでは仮に“这”系列で例文を挙げる。

这是杯子。これはコップです。
这个杯子このコップ
×我要这
我要这个。私はこれがほしい。

疑問形の“哪”は,「是」構文の主語としても単独で用いることはできず,常に“哪个”の形で用いられる。

×哪是你的?
哪个是你的?どれがあなたのですか。

“~些”

“这些”“那些”“哪些”(これら,〔それら〕,あれら,どれら)は複数の人・ものを指す。ただし,「すこしの,いくらかの」など複数のものを全体をまとまりとして指す語なので,具体的な数を指すことはできない。

这些苹果。これらのリンゴ。
×这些四个苹果。
这四个苹果。この4つのリンゴ。

発音

発音にはそれぞれ2種類ある。下段の読み方は口語的な読み方である。

这个那个哪个这些那些哪些
zhègenàgenǎgezhèxiēnàxiēnǎxiē
zhèigenèigeněigezhèixiēnèixiēněixiē

場所

「場所」を指す指示代詞は以下のようになる。

近称遠称疑問
这儿那儿哪儿
这里那里哪里

“~儿”と“~里”は文法的に同じものと考えてよい。口語は“~儿”,文章語は“~里”とされることがあるが,口語で“~里”を使っても問題はない。文章語は基本的に“~里”を使う。

名詞の場所化

場所を表す指示代詞を人を表す名詞の後ろに付けることで,場所を示す成分へ転換する機能を持つ。「~のところ」という意味になる。

他那里有你的书彼のところに君の本がある。

状態・方法

「状態・方法」を指す指示代詞は以下のようになる。

近称遠称疑問
这么那么怎么
这样那样怎样
这么样那么样怎么样

程度

「程度」を指す指示代詞は以下のようになる。

近称遠称疑問
这么那么多么

数量

「数量」を指す指示代詞は以下のようになる。

近称遠称疑問
这么(些)那么(些)多少

時間

「時間」を指す指示代詞は以下のようになる。

近称遠称疑問
这会儿那会儿多会儿几时