中国語レベル学習項目重要度一覧表:リスニング編

ここでは、『中国語レベル学習項目重要度一覧表』における「リスニング」の項目について解説する。表の見方は『中国語レベル学習項目重要度一覧表』を参照。

一覧表(リスニング部分)

  入門 初級 中級 上級
リスニング ◎☆☆☆☆ ☆☆◎◎◯◯△△▽▽ ▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

語学のセオリー

「リスニング、スピーキング、リーディング、ライティング」の4分野において、リスニングからはじまるのは最早語学のセオリーと言って良いだろう。これは言語を問わない。無論、中国語もまた然り、である。然るどころか、中国語においてはリスニングの重要性がさらに高まる。これは、先にも述べたように、発音と文字の2つの要因による

発音学習のためのリスニング

中国語の習得において発音が重要になるのは広く認知されているが、発音が重要になる以上、音つながりでリスニングが重要になることも容易に連想できるのではないだろうか。

発音というと、正確な発音をすることに意識が向くものだが、正確に発音を聞き取るということも重要である。言うまでもなく、リスニングはこれと密接な関係がある。リスニングで聞き取れない単語は、その発音についても問題がある可能性が高い。リスニングで区別できない発音は、発声の際も区別があいまいになっているケースが少なくないのだ。

発音は入門において一通り学習するが、初級においては発音の定着に比重が移り、リスニングが大きな役割を果たすこととなる。このように、リスニングの重要性が、特に初級に集中することは、発音と密接に関連性しているところも大きいのだ。

相対的に低いリーディングの重要性

もう一つの要因である「文字」だが、これは中国語と日本語がその文字として漢字を共有しているところに起因する。日本語の漢字と中国語の漢字は語義が重複しているものが多いため、日本人にとって、中国語のリーディングは相対的に容易になる。日本人のHSKリーディングパートの成績が高いのはこのためだ。

リーディングが容易になる分、発音のために相対的に難しくなるリスニングの比重がより高くなる。これが、中国語習得におけるリスニングの重要性を押し上げているのだ。

「精聴」から「多聴」へ

一言でリスニングとは言っても、実践における学習方法は一様ではない。このため、文法や語彙と同様に、レベルに応じて学習方法を変化させていく必要がある。

リスニングの学習方法は二種類に大別できる。集中した状態で繰り返し丁寧に聴く「精聴」と、多様なリスニングソースを聴く「多聴」だ。

入門初級では、「精聴」がリスニングの柱となる。リスニングの基礎力をつけることと、上述の発音を主目的とする。そして初級後期から中級にかけては、「精聴」から「多聴」へ軸足を移していく。このレベルではすでにリスニングの土台は出来上がっており、発音も一応完成している段階にあるので、より多くのリスニングを行うことで、リスニング力の向上と会話力の基礎作りを行う。

上級リスニング

中級も後期に差し掛かると、リスニングの重要性は急激に低下する。このレベルに到達する頃には、標準中国語におけるリスニングはほぼ完成しているためだ。

上級におけるリスニングは、例えば俗語が多用されていたり、なまりが入ったようなものが対象となるが、これは個々の学習者の状況に応じて行うものになるので、一般的な評価では、その重要性は低下する。

中級後期から上級においては、会話力の向上がより重要な課題となる。リスニングはそのための補助的な学習法と位置付けるのが適切だろう。