中国語レベル学習項目重要度一覧表:語彙編

ここでは『中国語レベル学習項目重要度一覧表』における「語彙」の項目について解説する。表の見方は『中国語レベル学習項目重要度一覧表』を参照。

一覧表(語彙部分)

  入門 初級 中級 上級
語彙 ◯◯◎◎◎ ◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎ ◯◯◯◯△△△△▽▽

語彙の特質

俗にボキャビルと呼ばれる単語の暗記、語学の代名詞的な学習項目である。

語彙力、単語力と言っても良いが、その重要性は、ボクシングに例えるのならばウェイトみたいなものだろう。多少なりとも格闘技に関する知識がある方はピンとくると思うが、ボクシングは体重が重い方が圧倒的に有利となる。もちろん、ある程度テクニックでごまかしは効くだろうが、ウェイトが上がるとパンチの重みがまったく異なるので、重量級と軽量級では勝負にならない。故に、ボクシングは体重で細かく級分けするのだ。

語彙力もこれに通じるところがある。会話ではテクニックなどである程度ごまかしは効くが、多少長く話していれば、その人の中国語力がどの程度のものであるのかはすぐにわかる。その基準の一つになるのが語彙力なのだ。

語学を続ける以上語彙との付き合いは続く。人間の記憶力から考えれば、語彙は無限に存在するようなものだ。なにせ忘れるのが早い。使わない単語は覚えた先から忘れていく。このエンドレスな学習が苦になるか否か。これは中国語を楽しめるか否かに直結する問題なのだ。

ボキャビル地獄

このように、語彙は常に語学と共にあるような存在であるため、その重要性も初期から後期まで平均的に長く継続する。

ただし、入門では発音に重点が置かれる分、相対的に重要度は低くなる。また、上級では新しい単語を覚えることよりも、既出の単語における習熟度を高め、修辞的な技法を身に付けることに重点が移っていくので、その重要度は徐々に低下していく。

そもそも、このレベルになると、新出単語は頻出度が低いものばかりになるので、覚えたところで使う機会はほとんどない。使う機会がない単語はすぐに忘れるものなので、初中級単語のように、使っていく中で覚えるというやり方が通用しにくくなる。

このため、上級語彙の習得難度は初中級レベルのそれとは比べ物にならないほど高い。そこにあるのは覚えては忘れ、忘れては覚え直して、という、ブラックホールのような終わりのないボキャビル地獄だ。故に、上級に到達したら、単語については深追いしない方が無難である。どのみち覚えきれなのだから、そんなことに費やす時間があるのならば、別に何かを学ぶ方が有益だろう。

初級と中級における学習法上の相違

上述の理由から、語彙学習が大きなウェイトを占めるのは、初級中期から中級となる。

実践上においては、単語の難易度と頻出度に応じて、学習方法を変化させるのが良い。初級レベルで学ぶ単語は、頻出度が高いものが多いので、単語の暗記は比較的容易である。このレベルの単語は単語帳など作る必要はない。リスニングやリーディングで接する機会が多いので、自然と覚えていくことができるからだ。

一方中級レベルの単語については、初級レベルのそれと比べ頻出度が低くなるため、自然と覚えるのは徐々に難しくなっていく。このレベルの単語については、リスニングやリーディングのような受動型の方法には期待せず、会話や作文のような能動型の学習の中で意識的に使っていくことで、記憶を確かなものにしていく必要がある。

実際には、単語の難易度は徐々に高まっていくものなので、このようにざっくりと切り分けてしまうのはあまり好ましくないのだが、ここでは便宜上、初級と中級に分けて解説してきた。過渡的な段階である初級後期から中級初期においては、部分的もしくは段階的に移行するなど、適宜工夫を施す必要があることを付け加えておく。