「CANON WORDTANK V903」「CASIO Ex-word 中国語モデル」「SHARP Papyrus PW-LT220」......中国語電子辞書御三家の新作が出揃いました。キャノンVSカシオの二強時代が終焉し、これにシャープを加えた三国鼎立時代へと突入した中国語電子辞書の新局面を徹底的に比較分析したレポートです。
※2009年最新版を作成しました。
「上位機種(キヤノン ワードタンクV923 VS カシオ エクスワードXD-GF7350)比較」
「標準機種(キヤノン ワードタンクV823 VS カシオ エクスワードXD-SF7300 VS シャープパピルスPW-LT220)比較」
中国語電子辞書各メーカーの新機種が出揃いました。先手を打ったのが電子辞書シェアNo.1のカシオ。エクスワードの新中国語モデルを他社より2ヶ月近く早く市場に投入。これに対して中国語電子辞書の王者キャノンは一般向けと上級専門家向けに分けていたラインナップを一本に絞って、名実共に究極のマシンとなった「ワードタンクV903」を余裕の三月末投入。自信の程が伺えます。ただ単に遅れただけかもしれないけど(笑)。
そして中国語電子辞書の新星シャープも三月下旬にパピルスの中国語新モデルをリリース......パピルスは以前から中国語モデルがあったって?以前のモデルは語るに及ばないものだったので評価対象外。今回はじめて評価に値するモデルを投入してきた、という意味です。
各社それぞれ新機能を搭載しており、技術の進歩を感じさせてくれます。昔は収録コンテンツ的に台湾製の電子辞書に劣っていた時代もありましたが、そんな話も今や昔。もともと繊細な日本人が編纂した辞書は中国のものに比べ使いやすいですし、技術力は申し分ありませんから、精密さと繊細さが求められる電子辞書は日本製で決まりです。もう海外製になんて目をクレル必要はありません。
シャープのパピルスが今作でようやく中国語手書き入力機能をサポートしたので、中国語電子辞書はキャノン、カシオ、シャープの三国時代を迎えることになりました。王者キャノン、対抗馬カシオ、新星シャープ......三国志を借りて喩えるなら中原の覇者キャノン、江南を固めるカシオ、そして蜀に篭ったシャープみたいな感じですか。早い話「一強二弱」みたいなものです。
閑話休題。本項では各社電子辞書の比較に重点を置いてまとめます。各社それぞれの電子辞書の機能や評価についてはそれぞれ個別に評価していますので、別途ご参照ください。
「CANON WORDTANK(キャノン ワードタンク)V903」
「CASIO Ex-word(カシオ エクスワード)XD-GP7350、XD-GS7300」
「SHARP Papyrus(シャープ パピルス)中国語モデルPW-LT220」
本項では主要3社の中国語電子辞書を項目別に比較して、ポイントを与えます。エクスワードは標準機種と上位機種の二種類ありますが、コンテンツ比較については便宜上上位機種を採用します。
また、基本的に3社共通のものは評価の対象外とします。例えばネイティブ発音とか、旅行会話コンテンツとか。殻の強度とか比較しようのないものもパス。特に中国語電子辞書として重要になる項目に絞って評価を加えます。
評価方法は当該項目の重要度に応じて点数を配分し、その点数を各社の電子辞書の機能に基づいて各社に再分配する方式を取ります。最後に点数を見ればどの程度の差があるのか一目瞭然......になるはずです。
ただし、使用者の中国語レベルや用途によって各々重視するものは異なってくるものですから、総合スコアはあくまで参考ということで。
配分スコア:10
中国語電子辞書ですから、もっとも重要なものは収録辞書コンテンツです。特にメインの辞書となる大型総合中国語辞書はその要となります。
一昔前の中国語電子辞書に収録されていたメイン辞書は紙のものに比べ古いものが中心で、それが電子辞書購入のネックにもなっていたのですが、この現象はここ1~2年の間に大幅に改善されています。
そんな訳で収録辞書の新旧は各社一律評価。ここで差が出るのは上級・専門家向けの辞書コンテンツとなる日本最大の中国語辞書『中日大辞典 増訂第二版』が収録されているか否かです。
キャノンのワードタンクとカシオのエクスワード(上位機種)には『中日大辞典 増訂第二版』が収録されていますが、シャープのパピルスは未収録。コレだけ見てもシャープのパピルスは入門初級レベルに絞ってマーケティングしているのが見て取れます。
なお、この辞書は入門・初級レベルの学習者にとってはあまり重要ではないので、これから中国語を勉強する、という方はこの項目はパスしてしまってもいいかもしれません。末永く使いたい、という方は別ですが。
配点
キャノン ワードタンク:4
カシオ エクスワード:4
シャープ パピルス:2
配分スコア:5
中国語新語辞書とか、中国語コンピュータ用語辞書とかがこれに当たります。メインに相対してサブ、ということです。重要性はメイン辞書に劣りますが、役に立つときは役に立ちます。使い込んでいくと、その存在意義を強く感じることになるでしょう。
ここに分類される辞書コンテンツについて3社の電子辞書を比較してみましょう。
キャノン ワードタンク
カシオ エクスワード
シャープ パピルス
一目瞭然ですね。キャノンとカシオはほぼ同等、シャープは目立って劣ります。
配点
キャノン ワードタンク:2
カシオ エクスワード:2
シャープ パピルス:1
配分スコア:4
中中辞書とは、言わば日本の国語辞典みたいなものです。本来は中国人が中国語を調べる際に使うものですが、中中辞書は私たち日本人が中国語を学習するのにも役立ちます。
辞書を引くだけでリーディングになりますし、中日辞典ではなかなか伝わりにくい語感を身につけるのにも効果的です。中級以降の学習者にとっては非常に有意義なものなのです。
この辞書を収録しているのは、現状ではワードタンクのみ。中級以上の学習者にとっては電子辞書の選択の余地をなくしてしまう重要なポイントです。
配点
キャノン ワードタンク:4
カシオ エクスワード:0
シャープ パピルス:0
配分スコア:6
電子辞書なのですから本来は辞書なのですが、近年の電子辞書は学習者向けコンテンツの充実振りが目立ちます。これは電子辞書が語学需要に支えられているためでしょう。
一般に電子辞書に収録されている学習コンテンツは入門初級者向けのものです。このレベルを修了している使用者にとっては、本当にどうでもいい機能でしかありません。
一方、これから中国語を始める、という使用者にとってはこれほど有意義なものはないでしょう。テキストにせよ通信教材にせよ、辞書に収録されているものを別途購入するとなれば結構な出費となります。それがセットになっているのですから万々歳。
オマケに辞書と連動しているのですから辞書の確認もラクラクです。本当にいい世の中になったものです。
ここに分類されるコンテンツについて3社の電子辞書を比較してみましょう。
キャノン ワードタンク
カシオ エクスワード
シャープ パピルス
これまでは劣勢だったシャープパピルスがここで光を放ちます。入門初級レベルユーザに対象を絞っているのが明確ですね。特に注目なのが「ゼロからカンタン中国語」の会話スキットが収録されているところです。これは旺文社の入門者向け中国語通信教育教材で、3万円以上する代物ですから、これを考慮して考えると、これから中国語を始める、という使用者にとってはおいしい買い物かも。
配点
キャノン ワードタンク:1
カシオ エクスワード:1
シャープ パピルス:4
配分スコア:6
学習者向けコンテンツを収録している他に、MP3プレーヤーのような学習補助機能を備えているのが最近の電子辞書です。単語の音声は言うまでもなく、再生速度を変速する機能、そしてSDカードやUSB接続で市販の音声コンテンツを取り込んで再生する機能は3社共に搭載しています。もうこれはデフォ。単語帳や単語カードのような語彙学習補助機能もこれに同じ。
この他パピルスとワードタンクはリスニング学習機能が充実していて、ワードタンクはさらに自分の発音を録音して標準の発音と比較できる機能がついているなど、まさに至れり尽くせりです。
配点
キャノン ワードタンク:3
カシオ エクスワード:1
シャープ パピルス:2
配分スコア:2
方言に興味がある方には魅力のコンテンツ。その地方で働いたり、その地方に出張するようなビジネスパーソンにはうれしい機能です。
純粋に普通語(中国語標準語)を学びたいという学習者には必要ありませんが。
このコンテンツはワードタンクの独壇場。このようなマイナーなコンテンツまで取り込んでしまうところにキャノンの中国語電子辞書に対するこだわりを感じます。
配点
キャノン ワードタンク:2
カシオ エクスワード:0
シャープ パピルス:0
配分スコア:4
英語をマスターしていて、新たに中国語を学習したい、という方、または中国語をマスターして今度は英語に挑戦、という方、もしくは英語と中国語を同時に勉強してやる、という野心的(笑)な方には魅力のコンテンツです。
いわゆるプロ需要という点から考えても、中日辞書では出てこないが中英辞書なら出てくるような語彙もあるので、このコンテンツは思いの他大きいのです。
このコンテンツもワードタンクの独壇場。凄いの一言。
配点
キャノン ワードタンク:4
カシオ エクスワード:0
シャープ パピルス:0
配分スコア:5
上述の各機能、コンテンツの他に評価の対象となるものに検索機能があります。
検索機能は相性や慣れもありますし、それぞれ使い込まないと何とも言えないものですから敢えてここで云々しませんが、ワードタンクの新しい試みは注目に値します。
ワードタンクV903では方言間の差異を比べることができる「中国語地方言語リンク」と、言葉を有機的に関連付けて関連項目や類語から対象となる言葉を検索する「中国語概念リンク」という新しい検索機能が搭載されています。
方言比較検索は方言コンテンツの追加を反映したものだと思いますが、「中国語概念リンク」というのは真新しい機能です。精度がいかほどのものなのかは使い込んでのお楽しみですね。
この他、ワードタンクV903ではUSB接続することで、パソコンのテキスト文の中の語彙を選択して辞書を引くことができる点も注目です。他の電子辞書もUSB接続はできますが、ただ単に音声コンテンツやテキスト文を取り込んだり入れ替えたりするだけの話ですから、ワードタンクV903の高機能性には目を見張るものがあります。
あと、これは機能ではないのですが、エクスワードは入門初級者向け標準バージョンと『中日大辞典 増訂第二版』を収録して画面も大きくなった上位機種バージョンに分かれています。
選択の余地がある、というのも評価して良いのではないでしょうか。
配点
キャノン ワードタンク:4
カシオ エクスワード:1
シャープ パピルス:0
1.メイン中国語辞書コンテンツ(配分スコア:10)
キャノン ワードタンク:4
カシオ エクスワード:4
シャープ パピルス:2
2.サブ中国語辞書コンテンツ(配分スコア:5)
キャノン ワードタンク:2
カシオ エクスワード:2
シャープ パピルス:1
3.中中辞書(配分スコア:4)
キャノン ワードタンク:4
カシオ エクスワード:0
シャープ パピルス:0
4.中国語学習コンテンツ(配分スコア:6)
キャノン ワードタンク:1
カシオ エクスワード:1
シャープ パピルス:4
5.中国語学習補助機能(配分スコア:6)
キャノン ワードタンク:3
カシオ エクスワード:1
シャープ パピルス:2
6.方言コンテンツ(配分スコア:2)
キャノン ワードタンク:2
カシオ エクスワード:0
シャープ パピルス:0
7.英中中英辞書コンテンツ(配分スコア:4)
キャノン ワードタンク:4
カシオ エクスワード:0
シャープ パピルス:0
8.その他(配分スコア:5)
キャノン ワードタンク:4
カシオ エクスワード:1
シャープ パピルス:0
総計
キャノン ワードタンク:24
カシオ エクスワード:9
シャープ パピルス:9
キャノン圧倒的。入門初級レベルから上級専門家レベルまで、幅広くカバーした史上最強のマシンとなっています。
一方でパッとしなかったのがカシオ。前バージョンの対比ではキャノンと互角とは言わないまでも、それなりの存在感があったのですが、新バージョンでは明らかに差を開けられてしまいました。
2ヶ月近く先行して市場投入したのである程度ユーザの囲い込みはできたのかもしれませんが、キャノンのこの圧倒的なスペックを見せられると今後は厳しいかも。前作のワードタンクのように液晶画面が暗くて見づらいとかいうくだらない欠点でキャノンがつまづいてくれない限り、厳しい戦いを強いられるでしょう。
そして中国語簡体字手書き入力機能を搭載してようやく土俵に上がることができたシャープのパピルス。今作は対象を入門初級に絞っているところがミソですね。中国語電子辞書の王者キャノンと正面衝突するのではなく、需要の大きいであろう入門初級レベルに資源を集中しています。
入門者向けの学習コンテンツの充実振りは群を抜いていますから、これから中国語を!という入門レベルの学習者にとっては魅力的な電子辞書となっています。戦略勝ちですね。
最後にまとめます。個人的にイチ押しなのはやはりキャノンのワードタンクV903です。コンテンツ、機能共に圧倒的で文句のつけようがありません。入門者から上級、プロまで、これで決まりでしょう。
ただし、入門者の場合はシャープのパピルスという選択もあります。入門者向けのコンテンツが充実してますから、それを計算に入れればお得な買い物になります。中級レベルに達している頃にはまた新しいバージョンが出ているでしょうから、そのときにワードタンクの次期新バージョンに乗り換えれば良いのです。
エクスワードは「エクスワード大好き」というコアファンでもなければ選択肢には上らないかも。入門レベルではパピルスに及ばず、中上級レベルではワードタンクに及ばず......。前作では二強の一角を占めていたカシオエクスワード。残念でなりません。
それぞれの電子辞書の詳細については以下のページで詳述していますので、合わせてご参照ください。
「CANON WORDTANK(キャノン ワードタンク)V903」
「CASIO Ex-word(カシオ エクスワード)XD-GP7350、XD-GS7300」
「SHARP Papyrus(シャープ パピルス)中国語モデルPW-LT220」
電子辞書は語学への初期投資のなかで、比較的大きな割合を占める投資項目となります。となれば、少しでも安く買いたいと思うのが人情というもの。次のページで中国語電子辞書を安く買うための手引きを公開していますので、ご参照ください。