序文
二大中国語電子辞書メーカーの新機種が出揃った。毎年新機種を投入する電子辞書シェアNo.1のカシオに対し、中国語電子辞書では最も評価の高いキヤノン。2010年は捨てて、2011年版に焦点を集めたが、二年越しのその新作は、期待を大きく上回るものであった。
本レポートでは、文字通り最強の中国語電子辞書を決定するため、中国語電子辞書市場で覇を競うキヤノンとカシオの2011年モデルのうち、キヤノンの上位機種とカシオの中国語モデル(カシオは上位標準の区別なし)を対象として、比較対比する。
なお、本項では両社電子辞書の比較に重点を置いてまとめている。それぞれの電子辞書の機能や評価についてはそれぞれ個別に評価しているので、別途参照のこと。
また、収録辞書コンテンツは、中国語電子辞書比較表を参照のこと。
※追記1:ワードタンクZシリーズのソフト開発が遅れており、発売が2012年春へ延期されるとの発表がキヤノンよりなされている。2011年中に購入する必要がある場合、エクスワードとワードタンク(V923)の比較となるため、別途レポートを作成した。
※追記2:ワードタンクZシリーズが2012年4月にようやく発売された。比較対象はエクスワード2012年版のXD-D7300となったので、新たにレポートを作成した。
評価について
本レポートではキヤノンの上位機種「wordtank Z900」とカシオの「Ex-word XD-B7300」について、収録コンテンツを中心に、項目別に比較してポイントを与える。
評価対象は基本的に中国語コンテンツ及び中国語学習に関連する機能に限定する。また、数値化が難しい項目は評価の対象外とする。例えば殻の強度や手書き入力の精度などである。
評価方法は当該項目の重要度に応じて点数を配分し、それぞれに対しそれを上限として採点する絶対評価方式を取る。
ただし、使用者の中国語レベルや用途によって重視すべきポイントは変わる。総合スコアはあくまで最大公約数でしかないことをここに付記する。
1.総合辞典
配分スコア:100
基本コンテンツ。大型中日辞典・日中辞典である。これまで、中国語電子辞書では日本最大の中日辞典である愛知大学編纂の『中日大辞典』と、小学館もしくは講談社の中日日中辞典という3点セットが基本であったが、2011年版では、キヤノンが小学館と講談社の中日日中辞典をダブル収録するという快挙を成し遂げ、総合中国語辞典における均衡を打ち破った。
採点は新たなスタンダードを打ち立てたキヤノンに満点、カシオは及第点の60点とする。
- 採点:
- Z900:100
- XD-B7300:60
2.中中辞書
配分スコア:50
中中辞書とは、いわゆる中国の国語辞典である。中国人向けに編纂された辞書だが、外国人の中国語学習用としても有意義な存在である。
特に中国語の微妙な語感を身につけるには非常に有用で、中上級者にとっては重要なコンテンツとなる。
2009年以降、中中辞書は中国語電子辞書のスタンダードとなっている。キヤノンは中国国語辞典のスタンダード的存在である『現代漢語詞典』(収録語彙数約6.2万語)を、カシオは中国最大級の大型国語辞典『現代漢語大詞典』(収録語彙数約10万語) を収録している。
単純に語彙数を比較すれば、カシオに利がある。もっとも、中国語学習用としては中国で広く使われている『現代漢語詞典』でも十分であることを付記しておく。
ここでは、語彙数が大きい点を評価して、カシオに軍配を上げる。
- 採点:
- Z900:40
- XD-B7300:50
3.機能型辞書
配分スコア:50
機能型辞書とは、ここでは文法語法や類義語など、中国語学習上特定の分野に特化した中国語辞書と定義している。
この分野ではキヤノンが先行しており、2009年モデルで文法辞書と類義語辞書をそれぞれ1コンテンツづつ収録した。2011年版でも同コンテンツをそのまま継承している。
収録しているのは『中国語文法用例辞典』と『中国語類義語活用辞典』である。『中国語文法用例辞典』は中国留学経験者には馴染み深い定番本『現代漢語八百詞増訂本』を完訳した辞書である。
カシオはまだこの類の辞書コンテンツを収録していないが、2011年版で初心者向けの文法学習テキスト『文法中心 ゼロから始める中国語』を収録しており、これを文法辞書に準ずるコンテンツとして評価する。
- 採点:
- Z900:50
- XD-B7300:10
4.新語辞典
配分スコア:30
急速に変化する中国社会を象徴するかのように、現在の中国では日々新語や流行語が生まれている。
書籍化されたものを改めて収録するという後追いコンテンツが中心の電子辞書が最も苦手とする分野だが、その重要性は日増しに強くなっているので、2011年版では独立した項目として評価する。
先代では双方異なる新語辞典を収録していたが、2011年版のキヤノンが従来の新語辞典に加えカシオ収録の新語コンテンツも収録したため、収録語彙の延べ数ではキヤノンがカシオを上回っている。
- 採点:
- Z900:30
- XD-B7300:20
5.英中中英辞書
配分スコア:20
英⇔中、中⇔英も必要になる使用者にとっては有用なコンテンツである。両ブランドとも収録しているが、語彙数ではカシオの方が圧倒している。
- 採点:
- Z900:10
- XD-B7300:20
6.専門辞書
配分スコア:20
特定の専門分野に特化した辞書。現在はパソコン辞書や固有名詞辞典を収録している。
この分野ではパソコン辞典のみのキヤノンに対し、パソコン辞典に加え『日中英固有名詞辞典』と『日中英・電子技術用語対訳集』を収録しているカシオが圧倒している。
- 採点:
- Z900:5
- XD-B7300:20
7.会話
配分スコア:20
中国語会話コンテンツ。現在のところ主に旅行中国語会話が中心で、辞典型のコンテンツは未収録の状態が続いている。
コンテンツ数ではキヤノンの1コンテンツに対し、カシオは3コンテンツあり、収録項目数でも二倍強となっている。
- 採点:
- Z900:10
- XD-B7300:20
8.資格対策
配分スコア:20
中国語資格対策コンテンツ。キヤノンが2011年版にて収録、中国語電子辞書の資格対策コンテンツゼロの壁を打ち破った。
後追いのカシオは未収録。次期に期待したい。
- 採点:
- Z900:20
- XD-B7300:0
9.方言
配分スコア:10
中国語普通語(標準語)学習用としては必要のないコンテンツだが、旅行や海外出向で中国の特定地域に滞在する場合に役に立つコンテンツである。
現在方言コンテンツを収録しているのはカシオのみ。キヤノンは2008年版で業界初収録を達成したが、2009年版以降は削除され、2011年版も引き続き未収録となっている。
- 採点:
- Z900:0
- XD-B7300:10
10.その他中国語コンテンツ
配分スコア:10
上記以外の中国語コンテンツとして、キヤノンは『日本の文化としきたり事典(日中対訳版)』が、カシオは「ピンイントレーナー」というピンイン学習コンテンツを収録されている。
- 採点:
- Z900:5
- XD-B7300:5
11.中国語学習補助機能
配分スコア:50
キヤノンは中国語学習を補助する機能が充実しており、テキストビューア機能、単語帳機能、メディアプレーヤー、レコーダー機能、発音比較機能、ディクテーション機能など、特に発音を中心とした多彩且つ強力な学習サポート機能を実装している。
この分野については長年キヤノンがカシオを大きくリードしており、キヤノンはその差を埋められないでいる。
- 採点:
- Z900:50
- XD-B7300:5
得点集計
| 項目 (スコア) |
総合辞典 (100) |
中中 (50) |
機能 (50) |
新語 (30) |
英中中英 (20) |
専門 (20) |
会話 (20) |
資格 (20) |
方言 (10) |
その他 (10) |
学習 (50) |
合計(380) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Z900 | 100 | 40 | 50 | 30 | 10 | 5 | 10 | 20 | 0 | 5 | 50 | 320 |
| XD-B7300 | 60 | 50 | 10 | 20 | 20 | 20 | 20 | 0 | 10 | 5 | 5 | 220 |
総括
2010年はキヤノンのリリースがなく、いち早くカラー化したカシオが強い競争力を誇っていたが、2011年版は二年越しのキヤノンが想像以上の進化を遂げて捲土重来、中国語電子辞書王者の実力を遺憾なく発揮している。
今回両ブランドの対比で決定的な項目となったのが総合中国語辞典。小学館と講談社のダブル収録はまさに圧巻である。カシオも及第点に達しているため得点差は40点だが、心情的にはキヤノンに120点付けたいと思わせるほどだ。2011年版では、この一点を見ただけで、キヤノンの勝利が確定したと言っても過言ではない。それだけのインパクトがある快挙であった。
また、中国語検定対策コンテンツを業界で初めて収録するなど、常に新しい試みを見せるキヤノンには畏敬の念すら覚える。
一方のカシオは、正直なところ、共通プラットフォーム上に中国語コンテンツを添えただけの印象が拭えない。電子辞書シェアNo.1を誇るカシオにとって、相対的に市場規模の小さい中国語電子辞書は「その他多数」のような存在であるのかもしれない。フィリピン語の会話コンテンツさえ含む膨大な数の共通コンテンツを眺めていると、どうしてもそのように感じてしまう。
面白いことに、項目別で比較すると両者「5勝5敗1分」の五分なのだが、配点の高い重要な項目でキヤノンが圧倒しており、結果として380点満点で100点という大差が付いている。真の意味での中国語電子辞書を追求しているキヤノンと、数ある外国語電子辞書の一つという位置づけのカシオの差がこのスコアに表れていると言って良いだろう。
ユーザ層から考えるならば、初中級者の学習用としては、絶対にキヤノンだ。小学館と講談社のダブル収録は言うまでもないが、その他にもその学習補助機能の充実ぶりは他社の追従を許さない。
上級者及びエキスパート向けとしては、大型中中辞典『現代漢語大詞典』や同じく大型中英英中辞典を収録しているカシオも一定の競争力を有しているが、キヤノンの小学館と講談社のダブル収録によって、その優位性が一気に霞んでしまった感が強い。こちらは各ユーザの必要次第だろう。
購入のヒント
電子辞書は語学への初期投資のなかで、比較的大きな割合を占める投資項目となる。となれば、少しでも安く買いたいと思うのが人情というもの。次のページで中国語電子辞書を安く買うための手引きを公開しているので参照のこと。



