忘却との戦い マイナス成長を阻止して中国語楽習

この連載のはじめに(※参照:「成長の喜び......「楽(たの)習」の源ここにあり」)で語学におけるマイナス成長現象について触れましたが、この克服は学習を楽しく/楽にする重要な鍵となります。

具体的な方法論に入る前に、今一度マイナス成長について簡単にご説明しておきましょう。中国語学習におけるマイナス成長とは中国語力の後退のことです。「昔勉強したことがあるけど、すっかり忘れちゃったよぉ。」なんていう言葉をよく耳にしますが、要はこのことです。

語学に限らず、およそお勉強と言われるもの、また習い事やスポーツなどでもそうですが、勉強しないと、或いは練習・訓練しないと忘れたり退化します。これは生理現象で、誰しも共通するものです。

中でも語学における忘却現象は顕著で、例えば今日100個の単語を暗記して、一ヶ月間放置してから改めて確認する場合、100個の内10個覚えていればあなたは秀才、普通の人なら2~3個覚えていれば御の字でしょう。

このマイナス成長を止めることさえできれば、語学はものすごく楽なものになります。本項では、この方法について考えてみたいと思います。

忘却曲線

語学における復習の重要性は前項「変化球で脳を刺激せよ ラクラク復習で中国語楽習」でも述べましたが、復習を行う理由の半分はマイナス成長を阻止にあります。

マイナス成長阻止という角度から復習方法を考えると、復習のタイミングが非常に重要になります。前項でも軽く触れましたが、忘却曲線の理論を復習に応用する意義はここにあります。

マイナス成長を防ぐには、ちょうど忘れそうなタイミングで再度復習してやるのが最も効率的です。これを繰り返すことで、短期記憶を少しずつ長期記憶へと変化させていきます。

「ゼロからカンタン中国語」に代表される通信講座は忘却曲線理論を積極的に取り入れていますが、市販テキストではカリキュラムの進捗について学習者の裁量範囲が大きいので、この点についてはあまり重視されていません。従って、学習者個人でそのタイミングを計る必要が出てきます。

ただし、これは学習量や学習項目の難易度・頻出度にもよるので一概に言うことはできません。独学の場合、個々の学習者自身で適宜最良のタイミングを研究していく他ないでしょう。

アウトプット

以前紹介した中国語のツール化(※参照:「中国語のツール化で中国語楽(たの)習」)や即学即用(※参照:「学んだものはすぐ実践 即学即用で中国語楽習」)で紹介したアウトプット型学習法はマイナス成長を阻止するのに非常に大きな効果を発揮します。

実際に中国語を使用するアウトプットの記憶定着率は単なるインプット学習より遥かに高いので、短期記憶を早期に長期記憶化することができます。インプットした項目をすべてアウトプットするのは難しいかもしれませんが、アウトプットできるレベルに達しているのならば、積極的にアウトプットの場を求めて、限りなく中国語ツール化や即学即用の状態を構築することが理想的でしょう。

リストラ・分野限定法

これも同じく既出ですが、「ゴールの可視化とご褒美インセンティブで中国語楽習」で紹介したリストラ・分野限定法もマイナス成長を阻止するのに有効な方法です。

新出項目が増えれば増えるほど復習対象が広がり、マイナス成長を招きやすい状態になります。故に新出項目の抑制に劇的な効果を発揮するリストラ・分野限定法が大きな効力を発揮するのです。

入り口を絞って対象を限定してしまえば復習は楽なものです。外国語として中国語を使用する私たちにとって、実際に必要となる、もしくは要求・期待される中国語の範囲はごくかぎられたものなのですから、それに絞ってしまえは良いのです。

選択と集中

そんなチンケな中国語ではなく、より高いレベルを目指している、という学習者の場合でも、この方法を応用することでマイナス成長を防ぐことができます。項目を選択し、集中的に学習資源を投下することで、短期間でその項目を仕上げます。そしてその項目と関連が深い項目に学習対象を移し、また学習資源を集中投下するのです。

関連が深い項目なので重複するものが多く、新出項目でありながら自然と復習に近い状態になります。また、関連が深ければ深いほど新しい項目の学習速度も早くなる、という利点もあります。

では関連の深い項目とは何なのか、という話になりそうなので、例を出してみましょう。

例えば、日常会話に限定して徹底的にリスニングを行います。次にリスニングした項目に限って徹底したスピーキングを行います。学習の対象は同じですから、自然と復習を兼ねる事になります。リスニングからスピーキングという流れですから「インプット→アウトプット」という語学のセオリーに従った方法です。

リスニングやスピーキングという形態を跨ぐことなく移行することもできます。例えば、旅行会話の次に日常会話に移行するとか、経済の本を読み込んだ後は金融の本を読むとか、とにかく関連性があるものに移行するのです。関連性が高ければ高いほど、復習効果も高くなります。

言わば「選択と集中」です。なんかビジネスの世界の話みたいですが、語学にも通用します。中国語習得を経営の視点から考えてみると、意外な共通点が見えてくるかもしれませんよ。