序文
市場の大きい英語に比べ教材やテキストに乏しい中国語ですが、近年のビジネス需要増加を受け、ここ数年大きな発展を見せています。これまではほとんど選択の余地がなかった本格的な通信教育もようやく競争の余地が生まれ、各社個性的な通信教育プログラムを提供しています。
その中でも明確な競争関係が生まれたのが入門レベルの通信教育講座プログラム。数多くの英語通信教育プログラムを有し、語学を志す者なら知らないものはいないであろう語学教材大手のアルクが、既にブランドとなった「マラソン」シリーズの中国語版「中国語マラソン」をリニューアルして市場投入した「わかる中国語 4カ月入門コース」と、同じく語学教育で定評のある旺文社が、パソコンとインターネットを取り込んで新たに構築した先進型学習プログラム「ゼロからカンタン中国語」。
この対象者が完全衝突した二つの中国語通信教育プログラムが、中国語通信教育に大きな変化をもたらしています。これまで明確な競争関係が存在しなかったこの業界に、ようやく健全な競争をもたらしはじめているのです。
中国語は発音が重要になりますから、発音を重点的に学ぶ入門レベルは非常に大切になります。その部分において学習プログラムの質的向上をもたらすであろう競争関係が発生したのは学習者にとっては福音と言って良いでしょう。
一方、選択の余地が生まれた、ということは、自分に合った学習プログラム・メソッドを自分で選択しなければならない、ということも意味します。本項ではそんな両社の中国語講座を比較することで、学習者に講座選択にあたっての参考として供したいと思います。
なお、本項では両社の学習プログラムの比較に重点を置いてまとめます。各社それぞれの学習プログラムや使用している学習メソッドなどついてはそれぞれ個別に評価していますので、別途ご参照ください。
特徴比較
先進性vs伝統性
一見すればわかることですが、両社のプログラムはまったくの別物です。旺文社のプログラムはパソコンベースで学習を進めるのに対し、アルクのプログラムは伝統的なテキストベースを採用しています。
パソコンベースの学習プログラムの利点は何といってもその「簡便性」と「娯楽性」にあります。例えば、誤答のみ繰り返し練習するのは、従来のテキストベースでは管理が非常に大変です。
私は付箋を使って管理していましたが、パソコンならそんな手間はもう不要。より高速且つ正確に管理してくれます。
また、ゲーム性を取り入れることができるのもパソコンの強みです。「ゼロからカンタン中国語」では「ステージクリア」というゲーム用語をそのまま取り込んで、学習を限りなくゲームに近づけています。これもパソコンだからこそ実現できる機能です。
逆に、パソコンと向き合って勉強するのが苦手、という方もいます。そのような学習者にとっては、従来のテキストベースで設計されている「わかる中国語 4カ月入門コース」の方が落ち着いて勉強できるでしょう。
10年以上継続しているのですから、それだけ見てもそれなりの価値がある訳です。熟成したプログラムですから安心して始められます。
先進性と伝統性、この対比こそ旺文社とアルクのプログラムをそれぞれに象徴するキーワードと言って良いでしょう。以下の対比も、結局はこのキーワードに帰結します。
発音学習プログラム
中国語の入門は発音習得のためにあるようなものです。言語を問わず語学の入門とはそんなものなのですが、中国語の場合は殊に発音が重要になるので、この部分は非常に重要になります。入門プログラムである以上、この部分の良し悪しが直接プログラムの評価にかかわってくるのです。
もちろんそんなことは両社共に重々承知ですから、それぞれ重点的にカバーしています。両社とも申し分ないと言って良いでしょう。その上で敢えて比較するのなら、ここでもやはりパソコンベースである旺文社のシステムに長があると言わざるを得ません。
通信教育講座の強みは、一般のテキストが図とCD音声だけであるのに対して、DVDなどの動画コンテンツを有しているところにありますが、「ゼロからカンタン中国語」ではこれに加え発音を録音し、模範音声と比較することができます。これは従来のテキストではとても実現できなかった機能です。
この点を考慮するのなら、やはり旺文社に軍配を上げざるを得ません。この点においては、アルクには付属で音声学習ソフトを付けるなどの対抗措置を期待したいものです。
その他
発音学習の他に数点まとめてピックアップします。
旺文社の「ゼロからカンタン中国語」は、パソコンをベースにしていることをいいことに(笑)、いろいろなコンテンツをつけています。
例えば「ピンイン入力トレーニング機能」。ピンインはアルファベットをベースにしていますから、タイピングと相性が良いのです。このようなピンイン学習ソフトも存在していますが、それを学習プログラムの中に取り入れています。
また、インターネットの発達を受け、コミュニケーションを取ることができる場をネット上で構築しており、iPodなどで音声を持ち運べる音声ファイルもダウンロードできます。
なお、対比ということでパソコンベースという点にばかり焦点を当ててきましたが、「ゼロからカンタン中国語」にはいわゆるペーパー教材も用意されています。パソコンを離れても学習を進めることができるので、通勤通学時間でも学習を進めることができます。
総括
比較してみるとよくわかりますが、機能的には旺文社の「ゼロからカンタン中国語」の優位性が目立ちます。片やパソコンベース、片やテキストベースですが、その差が機能面で歴然と表れてしまったとしか言いようがありません。
パソコンを使用した学習に抵抗のない世代なら旺文社の「ゼロからカンタン中国語」を選択すれば良いでしょう。これはもう疑いの余地がありません。
パソコンでは落ち着いて勉強できない、という方は自ずとアルクの「わかる中国語 4カ月入門コース」となります。プログラム自体は実績のあるものなので、間違いはありません。
今後の趨勢については、パソコン世代が増えていますから、旺文社スタイルの通信教材が主流になることは間違いないと思います。アルクはこの世代交代に先んじることができなかったのが痛いですね。
まぁ、もともと地力のある企業ですから、遠くない将来に旺文社を凌駕するような新しい通信教育講座をリリースしてくるものと思われます。それまでは旺文社で決まりでしょう。
それぞれの通信教育講座については以下のページで詳述していますので、合わせてご参照ください。
旺文社:ゼロからカンタン中国語
アルク:わかる中国語 4カ月入門コース
また、各社Webサイトでは体験版なども利用できます。
実際にこの教材を使用したことのある方からの感想を募集します。賞賛・酷評なんでも構いません。率直な意見をお待ちしています。教材には向き不向きがあるので多くの方の意見を集めることでより客観的な評価を下すことができます。貴重な体験談をお待ちいたしております。メールでご投稿ください。